こなぱんだ

タロウのバカのこなぱんだのレビュー・感想・評価

タロウのバカ(2019年製作の映画)
3.0
めちゃくちゃ考えさせられました、この時代の表現とは、みたいなことについて。
この映画絶対「青春映画」でもなんでもないでしょ、、、、

一言で表すと「ペラッペラのペラペラ精神映画」みたいな感じなのですが、この映画で映されている暴力ってめちゃくちゃペラペラなんですよね。結構凄惨な暴力シーン沢山あるのに、観客がそこに追いつけないというか。例えば「ダンサーインザダーク」でのラストに行くまでとか、めちゃくちゃ「人を殺す」ということに対する恐怖を感じられる撮り方をされてるんですが、この映画に関してはそれが全くない。

それは好みだと思うけど、タランティーノとかも「殺し」というかアクション系の暴力なんで、見ていて気持ちいい。でもこの映画における暴力って、そういう観客が「気持ちよくなる」暴力でもなく、「恐怖」を実感させる暴力でもなく、ただただそこに「暴力」という記号があるだけ。

だから見ていて本当になにも思わない。おそらくそれはわざとそういう撮り方をしているんだと思うんですよね。目の前にある暴力とか、タロウのネグレクトな実態をただ写真に撮るモブたち、というシーンがあったんで。たぶんそれぐらい現代の人達の感覚がペラペラだという話なんですけど。

それに合わせてメイン3人が「殺す」とか「死ね」とか「生きる」とかを言ってるけど、それも本当にそこになんの実感もないからめちゃくちゃ上滑りしている(もちろんわざとそういう芝居なのでしょう)。スギオの「好き」とか「愛してる」とかいう言葉がめちゃくちゃ上滑りしているのも、そのせいだろうと。

そして登場人物たちの「叫ぶ」芝居の多いこと……それも、上記の問題に関わってくるんですが結局タロウもラスト叫ぶだけで何もできないし、結局はそれが「ペラペラ精神映画」と言ってる理由なんですけど、、、

ひたすらペラペラの映像と、ペラペラの登場人物たちを見せられるの、すげえつまんなくなるだろうと思いきやなかなか面白いカットが沢山あって見入ってしまった。そこが大森監督のすごいとこですよね。

あとは本当に何も無い~~と思ってしまう映画にいきなり実存の極地みたいな大駱駝艦の人達が出てきたのも面白かった。

おそらく、この映画の中で唯一実存的な芝居をしていたのが國村さんで、冒頭のシーンで「それは違う」と言ったことが本当に全てなんだよな~~と個人的には思いつつ。

ペラペラの映像にペラペラの登場人物を重ねることで出来上がってる作品でそれがあまりにも徹底されているがためにそこが本当に凄いとしか言い様がないのですが、果たしてそれでいいのか?とは思います。

それを、観客が見ても、その「ペラペラの精神性」を追い続けるだけでは???と、実存主義の私は思ってしまう、、、、そして、この映画はおそらく現状の社会を映したことにはなっても「社会批判」にはなりえない、そこが3.0の根拠です、、、
こなぱんだ

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