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天使のたまごのearlgreyのレビュー・感想・評価

天使のたまご(1985年製作の映画)
3.0
 年端もいかない少女だし、お腹の中に抱えているのは卵なんだけど、これはまだ見ぬ命を妊娠している姿なのかなと思った。

 廃墟みたいな街で、亡者のようにも見える大人たちは、存在しない魚の影を追っている。
 そんな死も同然の世界の水を身体に取り込んで、卵に寄り添う少女の目は虚ろだけれど、生きている実感を強く感じた。

 最後には少年に卵を割られ、自分も地面の割れ目から落ちた少女はついに、取り込み続けていた世界の水に含まれてしまった。
 機械仕掛けの目玉みたいな太陽の外周にびっしり生えそろう遺物のひとつに少女が連なったのは、悲劇だったのか救いだったのか。

 そもそも卵そのものが地面から生えていて、栄養を受けていそうな出で立ちだったから、少女は巨大な母体の一細胞みたいな存在だったのかもしれない。
 少年はよそから来たようだったから、彼だけが異物なのかな。
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