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魂のゆくえの教授のレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
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無神論者にとって、本作のような「宗教観」と結びついた映画は意図がわかったようなわからないような、そして、きっと「全然わかってはいないんだろうな」と匙を投げがちではあるのだが、それらを差し引いたとしても、本作は大好きな作品である。

というのは、まさに本作は「宗教観」と同じくらいには「暴力」というものを描いている映画でもあるからだ。
「東洋人」と比べては、恐らくだが「西洋人」の方がより、その自らの内側にある説明のつかない「暴力性」を宗教に基づいた「戒律」的な倫理観でかなり強烈に抑圧している、という印象があり。
本作はまさに、内に渦巻く個人の暴力と「資本主義が成熟しきったインターネット社会」の醜い豊かさとの「戦いめいた」ものを描いていたりもする。

というのは「過激なエコテロリズム」が指し示すある種の正義と。宗教=道徳と結びつきながら「営利」に左右される「教会」の存在意義。
かなり具体的に酒瓶が捨てられるゴミ箱として表現されていたり、自爆ベストへの妄執をインターネットにアップされた動画でより狂気が誘発されるなどの描写でかなりわかりやすく示される。

「神への信仰」通りに生きてきたイーサン・ホーク演じる「トラー神父」も、イラク戦争で子供も奪われ、家族も崩壊。
酒に溺れ、癌に冒され、虚無感に包まれている矢先、「自爆テロ」に執着する。そしてラストで一転、聖母マリアよろしく「子を身篭ったメアリー」に次なる妄想を抱く。
信じている=妄想に過ぎない感情をその都度、入れ換えながら「生の営み」は続いていく。

現実というのはあくまで外側でしかなく。「個」というものの宇宙の中にある壮絶なまでの「闇の世界」にグーっと深く入り込んでいく脚本と演出にとにかく映画を観るという喜びを堪能した。
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