爆裂BOX

CURED キュアードの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

CURED キュアード(2017年製作の映画)
4.1
ゾンビ・パンデミック後、治療法が見つかり収束した後の元ゾンビ患者達を描いた物語、というと似たようなテーマでは「ゾンビ・リミット」や韓国の「隣のゾンビ」の最終話、ドラマだと「ゾンビ・アットホーム」等がありますが、本作のゾンビだった時の記憶があってその記憶を悪夢で見たりして悩まされるという設定は「隣のゾンビ」によく似ていますね。
主人公のセナンをはじめとした治療法によって治った回復者と呼ばれる人々は政府から仕事などを割り当てられ社会復帰を目指しますが、やはり元感染者という事で激しい差別にあうんですよね。感染していた時に犯した殺人の記憶に苛まれるセナンの姿には同情できますが、その一方で彼らを差別する人々にも共感はできるんですよね。やはりいつまた凶暴化するかもしれないという不安は付き纏いますし、なにより家族や友人、恋人といった大切な人を感染者に奪われた人達からすれば病気のせいで凶暴化して今は元に戻ったといっても到底受け入れられる存在ではないでしょう。エレン・ペイジ演じるセナンの義姉アビーも「夫を殺した感染者に遭ったら許せるか?」という問いに「病気だったもの、仕方ないわ」と答えていたけど、真実を知った後に泣きながら責め立てる姿も「だよなぁ…」と解りつつも切なくなりますね。自分は犯罪者と被害者遺族の関係性も彷彿しましたね。幾ら罪償って更生したって言ってもそう簡単に許せないこともありますよね。
差別される環境に怒りを覚え、回復者達を扇動してテロを起こすセナンの友人コナーも差別と苦悩の被害者ではありますが、このキャラは元から悪い部分もあったのかな?とも思います。だから悪夢見る事もなく開き直ったような態度をとれるのかな?
登場するゾンビは生ける屍ではなく「28日後」の様なウイルスで凶暴化した人間タイプで蒼白な顔した人といった印象でメイクはとくにしてないですね。お食事シーンもないです。感染者たち大暴れ!な展開は社会派な作品なんでないだろうなーと思ってたら過激派のテロで施設から解放された感染者たちが暴れまわってくれてこれはサプライズで嬉しい展開でしたね。
コナーは最後のポスター見る限りテロの首謀者とはバレずに選挙に立候補したのかな?そしてセナンとキリアンの今後は…
終始やるせない雰囲気に包まれた社会派ゾンビ映画でしたね。今の状況とダブって見える所もある作品でした(制作されたのはだいぶ前ですが)