この映画は、劇場で字幕版を観てから後日是枝監督のインタビューを呼んで改めて吹き替えも観た作品。
曰く、最初日本語で書かれた脚本を翻訳したから、セリフのニュアンスとしては吹き替えの方がより本に近いのだそうだ。
母ファビエンヌの自叙伝出版のお祝いでアメリカからフランスに戻ってきた娘と家族。
嘘ばかりの母、真実に固執する娘、2人は昔からすれ違ってばかり。
大女優で虚構の世界に生きてきたからこそ、呼吸するごとく平気で重ねられる嘘。
でもそれはファビエンヌの鎧であり、必死に得たものや自分を守るためのもののようでもあって。
その寂しさや虚無感がそこはかとなく透けて見えて、高飛車で失礼なのに、彼女の佇まいは観ていてずっと物悲しく感じた。
基本緊張感のある母娘だけど、無論、そんなことは知らない孫娘ちゃんのシーンが、いちいち微笑ましくてほっとします。
亀のエピソードが効いてるよね。
確かに魔女っぽい。
ていうか、カトリーヌ・ドヌーヴその人がもう魔女的な存在感!
でも、物語が進んで鎧が緩んでくるにつれ、ただ冷たく棘のようだった「嘘」は、優しいものへと変わっていく。
最後に無邪気に素のままで話していた孫娘の口から出る「どこまでも優しい嘘」から続くラストへ、エンドロールのころには心が暖かくなってます。