よかったのかよくなかったのかさっぱり分からない。それというのも、この映画を観るときの体験が、いつもの「映画を観る」という体験と著しく異なったからだ。スクリーンを目の前に、2時間考え事をしていた、という感じ。
変な気分だった。溜飲が下がる感覚と、ハチャメチャにムカつく感覚とがずっと同居していた。自分のこれまでのささやかな恋愛体験の断片が浮かんではモヤついて、スッキリしては消えていった。喜びとか、怒りとか、後悔とか、いろいろな過去の体験の幻影に振り回されるのは本当につらかった。それらが全部、失われたものとか望めてしまうものを諦めないために動員されてしまって、どうしようもなかった。