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イーディ、83歳 はじめての山登りのピポサルのレビュー・感想・評価

4.4
この映画を作り上げたこと自体が素晴らしいんだけど、シンプルに映画としてめちゃくちゃ上手い。スコットランドの雄大な自然の見せ方はもちろん、勢いで出発した旅の迷いつつも湧きでる興奮とか人間の老いを生々しく訴える肉体とか、テンションが上がってついウェアやギアを買い足してしまう登山あるあるとか。自分の持ってきた重くて嵩張るガスバーナーとやかんを自慢げに見せたのち結局最新の軽量ガスバーナーを買うわけだけど、その後ホテルの部屋でリュックに入れられたその年季の入ったギアをチラッと目くばせすることで思い入れがあることによる後ろめたさや主人公の意思を一瞬で感じることができる。この演出は上手いというかもはや感動した。
途中、命を救われたあの小屋に大切な写真を置いていったけど、これによってこの山でたとえ死を迎えたとしてもそれは本望であるとその後の無茶な行動にも納得がいく。

エピローグのないあっさりした終わり方も好感。ロンドンに戻ったあとの人間ドラマがあると変にお説教くさくなっちゃうし。あくまでもスコットランドの大自然と、いつになっても遅くはない人生の再スタートが肝なのでシンプルで好感を持てる。
単純に「83歳で登山ってすごいよね」だけではないクオリティで期待以上だった。
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