にしやん

さよならくちびるのにしやんのレビュー・感想・評価

さよならくちびる(2019年製作の映画)
3.0
解散を決めた人気インディーズデュオグループ“ハル”と“レオ”とその付き人“シマ”との三人の解散ツアーを描く音楽ロードムービーや。
車内やけどシマが運転し、助手席にハル、後部にレオが乗ってんねんけど、のっけから車内の雰囲気は最悪やな。特にハルとレオはお互いに全くちゃう方向を見ながら、しゃべる時も全く目も合わそうとせえへん。車内の空間を共有するんもなんか嫌やって感じや。今回廻るツアーが終わったら解散することはどうも決まってるらしいねんけど、原因は“ハル”と“レオ”の関係悪化が原因やということはすぐ分かるわ。普通ロードムービーっちゅうんは車内の会話がポイントになんねんけど、これはちょっと変わってて、車内の会話殆どあれへん。それどころか物凄い陰険や。どんなロードムービーやねん?
ストーリーはツアーの経過そのもんやねんけど、過去の回想シーンを挟みながら、この人気デュオグループがなんで解散っちゅう事態に至ったんかを観客にちょっとづつ見せていきよるわ。
わしこの映画観てすぐ感じたんは、感覚っちゅうか演出っちゅうか、なんかちょっと古くさいことやわ。車窓の流れる風景に歌の歌詞がテロップで流れるシーンがあんねんけど、これとか完全に70年代の超人気ドラマの「俺たちシリーズ」でやってたことと全く同じやんか。わしすぐ思い浮かべたわ。縦書きと横書きの違いはあるけどな。「俺たちシーリーズ」の二作目に「俺たちの朝」っちゅうんがあってんけど、これなんかは若い男二人と若い女一人のプラトニックな三角関係を描いてんねん。こっちの映画のほうは女二人に男一人やからドラマとは逆やけど、いつの時代も似たようなことやってんねんな。ちなみに観終わった後に監督の歳調べたら、やっぱりな。わしより5歳年上やわ。ちょっとした演出の一つやけど、なんかこの映画古臭いなあと思てしまたら、他の演出やら、セリフやらなんもかんもが古臭う思ってきてしもたわ。アパートやとか、レコード店やとか、ホームレスやとか、コインランドリーやとか、ドライブインやとか、殆どのシーンやらエピソードがな。バンドの中のゴタゴタとかもまあ昔からある話やし、タバコも吸い過ぎ。今をときめく若手人気俳優3人が芝居しとうから、今風にはなってるけど、やってることは中村雅俊の時代そのものやわ。昔の時代とちゃうんはスマホと百合くらいかな。もうちょっと若い監督さんが撮ってたら、もうちょっとちゃうんとちゃうかな。今回若い人等が観てどうなんやろ。
映画の内容やけど、三人の関係性、ハルとレオ、ハルとシマ、レオとシマのそれぞれについてはまあまあ描けてるとは思う。問題はそれぞれの内面や。シマは饒舌なくらい自分の抱えてるもんを色々としゃべってたさかい、そこそこ分かりやすかったけど、ハルとレオは無口っちゅうか、あんまり自分等の内面とか抱えてるもんとかしゃべらんかったからな。ハルは歌詞があるからまだええけど、レオのほうはシーンから推測するしかあれへんわ。女性陣の抱えてるもんが百合とDVだけでは、ちょっと描き方というか捉え方が雑というか、浅いことないか?この監督さん、若い女性の内面の描き方がいまいちかもしれんな。女優が二人とも演技が立派やさかい、遠慮したんかな。それとも演技に依存したんかな。
ライブシーンやけど、ギター演奏で言えば、コードとストロークについては最低限はやれてたけど、最近の音楽映画の演奏レベルを考えたら、全員もうちょっと頑張っても良かったんとちゃう?どっちかでええから、アルペジオくらいまではやってほしかったかな。歌のほうは、二人ともそこそこ良かったけど。でもな、なんか歌わされてる感はあったわ。ハルがほんまに自分で作った感じは全くせえへんかった。映画自体の説明になってるからな。制作側の都合みたいな取って付けた感は否めんわ。
それと途中で挟み込んだテレビインタビューの映像やけどあれは全部アウトや。特にインタビュアーのアナウンサーとエモい女子二人はやりすぎやって。あそこまでは絶対に要らんわ。
最後に一言。この三人、特に女性二人がなんで別れる必要あんのか、実はわしには最後まで分からんかったわ。別に三角関係のもつれとか全くないやんか。実は三角関係にもなってへんよ。それ以前の問題やわ。最初はもっと泥沼のドロドロの三角関係かと思ったら全然ちゃうやんか。みんなちょっとナイーブ過ぎるんとちゃうか?シマが入ってきてゴタゴタはしてきたんやろけど、わしから見たら絶妙なバランスを保ってる気ぃしたけどな。恋愛はそれぞれ止められへんけど、完璧にプラトニックな三角関係が維持できる仕組みになってるもん。これはある意味凄いよ。ええトリオやと思ったけどな。どうやろ?
にしやん

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