花俟良王

ドクター・スリープの花俟良王のレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
4.5
超面白かった。批判する人とは期待してたものが違うんだろう。

そもそもキューブリックの『シャイニング』は孤高の作品なのだから、アレをそのまま求めたら絶対悲惨なことになる。

でもネトフリドラマの『ザ・ホーンティング・ヒルハウス』で幽霊屋敷の恐怖と叙情を融合して大いに楽しませてくれたマイク・フラナガンは本作の監督・脚本・編集をこなし、原作とキューブリック版を同時にリスペクトする荒技を繰り出した。

キューブリック版好きは、不老不死軍団とかサイキック合戦とか死んで煙になるとかは求めてなかったと思うけど、でもそれこそがキング的なモダンホラーな世界観。これはこれですこぶる面白い。特に目的の少女を頭の中で探し出し対峙するシーンは映像的にも演出的にも素晴らしかった。

終盤のファン感謝祭のようなエピソードは確かに唐突な印象も与えるかもしれないけれど、でもあの音楽が流れ水面スレスレにカメラが移動したら鳥肌を立てない人はいないだろう。これを見たかったのだから。

勝手な想像だけど、それまでの本編は、この終盤が撮りたかったがための仁義というか禊(みそぎ)というか通過儀礼というか、「ちゃんと分かってるんでこっちもやらせてください」と筋を通そうとした努力の成果なのかもしれない。

結局は何を期待していたかで評価は大きく変わるのだろう。「続編」と謳うのはまあ宣伝だからしょうがないけど、キューブリック版『シャイニング』と肩を並べることなどは不可能だ。

だから僕は最初から「『シャイニング』好きが楽しめるネタ満載で、しっかりした演出と演技が堪能できて、ちゃんと怖がらせてくれる作品」を期待した。

そしてそのハードルをはるかに超えてくれた、ということだ。
花俟良王

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