図師雪鷹

アルキメデスの大戦の図師雪鷹のレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
4.5
まさかこんなに真実に迫るような語り口の物語がフィクションだとは思わなくて、それを知ったときは心底驚いた。

主人公は櫂直(かいただし)。まさに数学で戦った男。
時は1933年。海軍では新戦艦を何にするかという議論がなされていて、山本五十六の空母案、平山忠道の超巨大戦艦「大和」案に分かれていた。
空母案に比べて、戦艦大和案は予算が少なく実現性が高い上に、日本国民に威厳を植え付ける役割が期待されていたので海軍大臣は大和にゾッコンだった。だが、山本五十六としてはなんとかしてそれを防ぎたい。戦艦大和はかなり巨大で、明らかに空母よりも予算がかかるはずなのに、書類上では大和の方が安く上がるのは明らかに書類偽造だと思われた。山本は、そこを突けばうまくいくと考えた。

そこで、彼は天才数学者の櫂直を雇うことにした。


だが、上からの圧力は強大で、櫂は図面もろくに見せてもらえなかった。彼は果たして、どのように大和の欺瞞を暴くのか。



"美しいものを見ると、測らずにはいられなくなるんだ"

これは櫂の発した言葉だが、これだけで彼が非常に面白く、魅力的な存在だと分かる。

非常にキャラ立てがうまいので主人公である彼に感情移入しやすく、最後まで楽しめた。


だが、一番印象に残ったのは敵である平山の言葉。
平山が生み出した戦艦大和に対し、櫂は「日本人に、間違った幻想を植え付けることになる」と最後まで反発するが、平山は彼の主張に同意した上で、戦艦大和を造った本当の理由を明らかにする。


その衝撃さに櫂も、観客である私も度肝を抜かれた。
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