インドの名優サンジャイ・ダット氏の激動の半生を基に、「きっとうまくいく」「pk」で知られるヒラニ監督が涙を、笑いを、そして社会風刺をも丁寧に盛り込んだマサラムービー。
前半ではプレッシャーから薬物に溺れるサンジューが描かれる。「やめたくても自分の意思じゃやめられない」クスリの怖さを時にコミカルに、時にショッキングに描写し、これだけでも1本の映画として完結するくらいクオリティの高いものだった。特筆すべきは、インド映画の象徴ともいえるダンス・ミュージカルシーンを、クスリによるトリップを思わせるものとして演出していることだ。明るく楽しい曲に、不安を覗かせるセンスに驚かされた。
後半ではテロリストの疑いをかけられたサンジュー。ここにヒラニ監督があるメッセージを込め、伝記映画を社会派作品に昇華させており、その脚本の出来に唸らされた。
全編を通して描かれるのは、真の友情と家族愛である。映画界のサラブレッドと、我々一般人。生まれは違えど大切な人を想う気持ちに違いは無いだろう。多くの人の共感を呼べる映画だと思うので、口コミで映画の良さが広まって上映館が増えることを切に願う。個人的にはMIBファンにオススメしたい。