やわらか

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのやわらかのレビュー・感想・評価

4.3
2019年の映画締めとして帰省先の大阪、テアトル梅田にて鑑賞。
 
大人向けなテイストの新規カットが、既存のカットにパイ皮のように折り重なって挿入されたことで、より奥行きが感じられる作品になった。2016年版ができて、その上で本作が製作されたことに納得。
 
2016年版では原作ストーリーを短縮し、かつ、すずという女性個人の内面深くにフォーカスを当てないアプローチを取っていた。それによって和らげられていた作品の強度が、今作ではよりダイレクトに伝わるようになったと思う。
 
それ自体は作品を観るものにとって素晴らしいことなのだけど、普段から強い刺激に慣れていない一般的な観客に対しては、少し敬遠してしまう向きもあるのかな、とも。もちろん長すぎて体力的にあるいはおトイレ的に厳しいというのもあるし。
 
自分は特に片淵監督を知らなかったけど、何の気なしに前作のクラウドファンディングに参加していて、出来上がった作品を観てはじめてどえらいものに縁ができたと喜んだ感じで。
 
監督はもちろん、のんさんはじめとする出演者やスタッフの方が次々に作品への思い入れを口にし、ネットで話題となり(自分も)、そんな前作で生まれた波がここまで続いてきたのはうれしい限り。
 
今回の公開でいったん一区切りついた形になると思う。監督の新しい作品がどこに向かうのかとても楽しみ。
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