SY3KR

mid90s ミッドナインティーズのSY3KRのレビュー・感想・評価

3.5
兄貴の部屋に飾られた数々のロックバンドのポスター、スティーヴィーの着ているストリートファイターⅡのTシャツ、当時流行りまくったスケートボード、女性たちの肩やヘソを過剰に露出したストリートファッション…16ミリフィルムのザラついた映像感までもが足され、本当に90年代のLAにタイムスリップしたかのよう。

各キャラクターの個性を引き立てつつ描かれるド定番のジュブナイルだが、まともな教育も受けられない環境で、近所の不良少年と非行に走る13歳のスティーヴィーは確実に破滅への道を歩き出している。単に「新しい友達ができて良かったね」では済ませられないヘヴィさだ。

また、彼らと過ごす時間は永遠のものではなく、明らかな終わりを感じさせる。全員が貧困に喘ぎ、底辺の生活から這い出そうと夢を語るものの、それが叶うほど甘い世の中でないことはきっと心のどこかで分かっているだろう。

「有害な男らしさ」で一家を支えようとする兄イアンとの関係性も物語の中で一つの変化を迎え、家族との繋がりについても考えさせられる。『ベン・イズ・バック』や『ある少年の告白』で葛藤に苦しむキャラクターを演じたルーカス・ヘッジズが、またしても素晴らしいパフォーマンスで存在感を発揮した。

全てが時間と共に移ろい消えていく中で、輝かしい瞬間だけを切り取ったような儚さを放つ1本である。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:81%
・観客支持率 :81%
「本作は明瞭だが郷愁を誘うジュブナイルであり、ジョナ・ヒルの監督デビュー作として素晴らしいスタートを切る作品になった。」
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