TAK44マグナム

オーヴァーロードのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

オーヴァーロード(2018年製作の映画)
4.1
淀んだ黒いタール。


J・J・エイブラムズ製作による、コンバットホラーアクション。
脚本のビリー・レイは、「ターミネーター」の新作でデビット・S・ゴイヤーと共にクレジットされているシナリオライターで、他にも「ボルケーノ」や「フライトプラン」なども担当した人。
思うに、細部を担当するというよりも表にでるアイデアを練るタイプなのでは?
そう思うと、第二次世界大戦とゾンビを巧く絡めた本作のアイデア出しにピッタリの人材のような気がします。

海外盤ブルーレイを購入して鑑賞しましたが、ちゃんと日本語入りで安心です。
最近ですと、ジェニファー・ローレンス主演の「マザー!」の例がありますので、近いうちに少なくとも国内盤ソフトは発売されるのではないでしょうか?
無名キャストで固めているのもあって(※書き忘れていましたが、部隊のリーダー役はカート・ラッセルの息子さんであるワイアット・ラッセルです)、劇場公開されるかどうかは微妙かもしれませんが・・・
(無事、日本でも劇場公開されましたね!)


第二次世界大戦末期、ある米軍空挺部隊が独軍の電波塔を破壊する任務のためにフランスの村に降下した。
激しい対空砲撃の中、何とか生きて土を踏んだ少数の兵士たちは、途中で出会った女性クロエの案内によって敵基地となっている教会近くの村へと侵入する。
すったもんだの挙句、敵将校を捕らえた彼らは、聞き出した情報を元に電波塔の破壊を目指す。
しかし、教会は普通の基地施設では無かった。
心優しき兵士ボイスは、敵兵から逃れるためにトラックの荷台に乗り込むが、そこには米軍兵士の死体が積まれていた。
そのまま教会内へ入ったボイスは信じられない光景を目にする。
ナチスドイツは、そこで秘密裏に人体実験を行っていたのだ。
それは、死んだ者を不死身のゾンビ兵として蘇らせる、神をも恐れぬ禁断の実験であった・・・!


事前に内容を知らなければ、たんなる戦争映画としか思えないのが、中盤からジャンル映画に変貌して驚かされる本作。
ナチスといえば、とにかく危険な実験ばかりやっているイメージがありまして(苦笑)、その科学力はウィルスやロボット、そしてゾンビを兵器として活用するためにこそ発揮されるわけです。
当然、フィクションの世界に限りますけれど(汗)

そんなわけでジャンルもの大好きなJ・J・エイブラムズが、B級映画では定番ネタでもある「ナチス製のゾンビ」を大金をかけて大真面目に映画化してしまったんですね。素晴らしい!


全編の殆どが戦争映画ですので、第二次世界大戦ものが好みな方は衣装などに拘っているらしいし、気に入るかもしれません。
ただし、史実に忠実じゃないとダメという細かい方には向きません。
主人公が黒人兵士というところからして、当時の状況を無視したキャスティングがなされていたりしますので・・・。

ゾンビホラー要素が色濃くなってくるのは中盤以降。
ボイスが教会内で地獄巡りをする辺りから、国家間の戦争というマクロな視点は薄まり、(復讐に燃える将校ゾンビの脅威にさらされる)ボイス達のミクロな視点が主になっていきます。

ゾンビの大群が登場するわけではなく、ゲームの初期「バイオハザード」みたいな雰囲気。
強靭で凶暴な怪物とのタイマンバトルがクライマックスとなります。
展開的に斬新さは乏しく、ややオーソドックスすぎるきらいはあるものの、こういったバカ映画をここまで真面目に作られてしまうと平伏すしかないと言うか、「よくぞやってくれました!」と嬉しくなってしまいます。
さすが、怪獣やら宇宙人を大真面目なネタにさせたらキャメロンやスピルバーグとも肩をならべるであろう男、J・Jですよ。


リーダーの漢気や、兵士と子供の友情、ナチスの非道さなど、押さえるべきポイントはちゃんと押さえていますし、大規模な銃撃戦や爆発も良い感じにアクセントになっていて、デキの悪いB級との違いをまざまざとみせつけてくれます。
お金をかければよいわけでも無いですけれど、やはり作り手が一流を揃えられると違いがはっきりと分かります。
とは言っても、低予算だけど愛だけはあるB級作品も大好きですけれどね!

ゴア描写は程々ですが、不気味な実験体や火炎放射による処刑?など見どころには事欠きません。
こういう系統が好きなら、退屈するって事は少なくとも無いのでは、と思います。

そうそう、全然知らない女優さんでしたが、クロエ役のマティルド・オリヴィエが個人的に気になりましたね。
すごい美人さんというより、どこか儚げで知的な雰囲気のあるルックスが魅力的に映りました。
やる時はやる、みたいな姿も格好良かったです。


しかし、みんなナチスの科学力は世界一〜!ネタが好きですよね。
かくいうマグナムも大好きなので、ナチスが月に基地作ってた「アイアンスカイ」とか、ああいうバカなアイデアで押し切るストロングスタイルは大好物です。
本作も、ナチスネタに新たな歴史を刻んだホラー大作(しかしながら大作というよりも、J・J自ら語っているように、ロッド・サーリングがやりそうな「ミステリーゾーン」ぽい内容なんですけれどね)として記憶に残ってゆく、そんなポテンシャルを秘めた一作・・・か、どうかは各々の判断にお任せ致します(苦笑)
TAK44マグナム個人としては、大変楽しめた次第です♪


セル・ブルーレイ(海外盤)にて