にしやん

オーヴァーロードのにしやんのレビュー・感想・評価

オーヴァーロード(2018年製作の映画)
4.1
B級映画って言うたら怒られるかもしれんけど、B級映画の傑作や!(ええ意味で)全く何の予備知識なし、期待もせんと鑑賞したんやけど、正直ビビったわ。これはマジでおもろい!
映画ジャンルとしてもちょっと変わってる。ベースは第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦の戦闘を舞台にしたれっきとした戦争映画やねんけど、話しのメインどこが本格ホラー映画になっとる。合わせ技っちゅうか、ハイブリッドちゅうか。戦争とホラーのハイブリッドってあんまり無いんとちゃう?
まず、戦争映画としてのクオリティが高い。中々立派な出来や。冒頭からして戦場の臨場感と迫力が凄い。主人公は当然やけど、映画を観てるもんまでいきなり戦場に引きずり込みよるわ。もうすっちゃかめっちゃかのグチャグチャ状態や。戦場に放り込まれるとはどういうことなんかっちゅうことを映像と音とで無理矢理疑似体験させられる感じやな。
ええんは冒頭だけやない。主人公含めた登場人物達はある決死の任務を背負ってそれを遂行していくんが、まず映画のストーリーの本筋になってる。その本筋を全く壊さんと、その本筋にちょっとずつ戦争とは別の不気味なもんを、それも色んなやり方で垣間見せていくっちゅう展開は見事なもんや。
とにかく始まりから終わりまでスリルの連続。緊張感が途切れへん。次から次へと、あの手この手、手を替え品を替えほんまにバラエティに富んだピンチ状態の連続や。これで終わったかと思いきや、すぐさま次のピンチ、それも前よりももっとエグいピンチに放り込みよる。それが殆ど最後までずっと続くんや。ほんまに凄いよ。最近観た映画では、この映画だけかな、腕時計見いひんかったんわ。ハラハラのしっぱなしで。
それと、締めくくりの長回しが中々凄いんよ。戦争アクションとしても最後まで一切手抜けへんで!というんを最後の最後にアピールするとこも心憎いでほんまに。
人間の描き方についても、主人公のモラルっちゅうか、正義感っちゅうか、それが全くブレへんとこも良かったかな。途中わし等観てるもんのほうが、「戦争やのに何青臭いこと言うてんねん」って思てまうくらいのヒューマニズムを貫くんやけど、それが観終わった後には清々しい気持ちになったわ。やっぱり自分が正しいと思うことは、上官に何言われようが、自分の命が危なかろうが、結果がどうなろうが、ブレずに最後までやるっちゅうことなんかな。
それと、他の反ナチス映画とは全く違う手法で、ナチスのクズっぷりは勿論のこと、ナチスの常軌を逸した恐ろしさも表現できてたとこも中々エラもんや。
この映画、深い感動とか教訓とかは全くあれへんけど、それよりこのスリルは体験の価値ありやと思うわ。是非劇場で観てほしいわ。
にしやん

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