静かなのにこんなにも心動かされるとは!まさに"思い出"の作品。
アルフォンソ・キュアロン監督の子供時代を基に作られた今作。(イタリアのローマかと思いきや、メキシコシティのローマ地区の事だった)ノスタルジックで静か、遠景や長回しが多いのでリアル過ぎてぼーっとする。だけど何故かとても心地よく、沁みるものがあった。
BGMもなく、色もなく、物語の起伏もなく、映像だけで見せる。役者もほぼ素人。(病院の医師たちに関しては本物!)中流階級の家族とその家の使用人クレオのやりとりがリアルで、当時の時代背景を細かな演出によって馴染ませてるのも凄い。ただの思い出ではなくて、人種や階級、当時のメキシコ情勢とか色々考えさせられる。
大人しくて感情をはっきりと表には出さない主人公クレオ。いつのまにか彼女に感情移入し、終盤のワンカットのシーンでどっと涙が込み上げる。美しくて素晴らしいしとても贅沢だ。以前なら"物語"らしからぬ感じや長回しにちょっとつまらないと感じでいたかも知れないけど、今、この映画を観て素晴らしいと思える自分で良かった。