にしやん

HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツのにしやんのレビュー・感想・評価

3.0
マサチューセッツ州の「ケープ・コッド」へ夏を過ごしに来たティーンエイジャー・ダニエルと地元の不良・ハンターを中心に物語は進み、1991年アメリカの小さな町で起きる破滅をサスペンスタッチで描く青春映画やな。  「君の名前で僕を呼んで」「ビューティフル・ボーイ」で一躍スターになったティモシー・シャラメの最新作や。まあ、最新っちゅうても2017年の映画やけどな。

まず今回の映画の舞台は90年代や。オープニングタイトルがこの時代の雰囲気やな。デジタルっぽないやつ。それと、その時代っぽい編集やなと感じるテクニックもちりばめられてたな。スコセッシとかタランティーノとかガイ・リッチーっぽいっていうかそのままというか。そういう感じは別に嫌いではないけどな。その他やけど、懐メロやとか、ビーチの空撮やとか、ドライビングシアターやとか、パーティ、ドラッグ体験等々、お決まりの路線というか、新味はあれへんな。どれもこれもどっかで観たって感じや。監督は多分自分の好きな映画の要素を真似したかったんやろけど、その「カッコええやろ?」って魅せられる絵がどれもこれもちょっと中途半端やったかな。 

それでも、なんっちゅうても、ティモシー・シャラメは相変わらずキレイな顔してはる。劇場結構客入ってて、客の8割以上が女性やって、完全にシャラメ目当てやろ。大したもんやな。せやけど、わしはもう一人ハンター役のアレックス・ローのほうが良かったな。一瞬強面な雰囲気やねんけど、何か優しさを感じる。役のキャラクターとしてもシャラメよりよっぽど深みがあって良かった気ぃしたけどな。

この映画やけど、まず主役のティモシー・シャラメ演じるダニエルのキャラに全然魅力があれへん。なんとなく悪事に手を染めて普通の道から外れてしまう転落話やねんけど、ダニエルは何も考えんとただ調子に乗ってるだけで、まさしく行き当たりばったりや。それやのに、この映画はあまり主人公に対して批判的には描いてへんさかい、少々イライラしてしもた。逆に、ハンターを演じたアレックス・ロウのほうが正直存在感あったわ。どこか刹那的で人を惹きつける眼差しが印象的や。ハンターは犯罪に手を染めてたせいで妹に殆ど無視されてたんやけど、何とか立ち直ろうとするところもあって、人間としてどう見てもハンターのキャラの方が魅力があんねん。ダニエルかて父親が早くに死んだっちゅうというエピソードがあんのに全くそれが活かされてへん。シャラメの美しさを持ってしてもいまいち魅力は感じへんかったわ。

本作はリゾート地を舞台にしたそこらへんにようある青春物語の雰囲気で始まるねんけど、町にふらっとやって来た主人公のダニエルがやらかしてしもて、相棒のハンターとその妹のマッケイラがえらい目に遭うサスペンスもんへと展開していきよるわ。この映画を観る前はいつものベタな青春映画で、ひと夏の苦い経験みたいなもんを描くんかなと思ててんけど、観終わってみると、意外なほどに残酷な話やったわ。本作はダニエルの目線で描かれてんねんけど、ハンター目線で描くことも充分できる話や。ハンター側から見たら、とんでもなく酷い話やで。彼には全く救いがあれへんわ。最後に彼が見せた正義かて誰にも知られることなくや。なかなか辛いのう。

終盤は、舞台のバカンス地にハリケーンがやってきてくるわ。実際にこの地で1991年にハリケーンが襲来したみたいで、それに由来してんやろ。ハリケーンの破壊シーンは殆ど描かれてへんかったけど、まあ、ダニエルがハリケーンみたいなやつやったってことかいな。

アメリカの青春映画は日本映画のような単純なノスタルジーにおさまらんと、青春の加害性、破滅性みたいな毒を必ずといっていいほど入れ込んでくんな。あたらめて思たわ。

全体的な雰囲気はそこそこ良かったけど、物語としては少々薄っぺらいかな。そんな感じやな。 
にしやん

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