にしやん

無限ファンデーションのにしやんのレビュー・感想・評価

無限ファンデーション(2018年製作の映画)
2.8
若い役者たちとミュージシャンが即興劇で作り上げた青春映画やな。全編即興劇やということで、どないなんねん?ちゅう心配もありつつ鑑賞や。思ったよりもストーリーはスムーズに進むわ。大まかなストーリーラインはちゃんとあるみたいやし、事前に役者全員に把握させてるんやろな。

即興劇っちゅうんは、ええ意味でも、悪い意味でもリアルやな。普段の一般的な日常会話みたいに「あっ」「えっ」の繰り返しがあったり、質問と答えがぴったり合うてへんかったり、何遍も同じこというてたり、聞き返したりな。リアルと言えばリアルやけど、映画としてはやっぱりぎこちない。特に、主人公とオカンとの会話、あれは終始酷かったわ。会話の繰り返しもそうやけど、リアルさが別の面に出てしもてる。最後まで親子になることなく、親子の役をやってるだけのただの他人状態やったな。祭りのシーンとか要んのか?

あと、役者が黙ってまうシーンもそれなりにある。何を言おうとしてんのか、今自分の頭でグルグル考えているっちゅうんがこっちにも伝わってくるな。次何言い出しょるんや?っちゅう緊迫感があるわ。実際の会話でも次に何言うか困るみたいなことは誰でもあるしな。せやけど、ナノカの友達が主人公に詰められるとこやけど、あそこはあのままでええんやろか?結局友達が何を考えてたんか分からずじまいや。あれでほんまにええんかいな。台本ある映画やったら普通無いわな。

あと、自分のセリフを考える時間を作るためやろけど、相手が言ったことをオウム返しするシーンも結構あったな。これかて、まあテンポ悪いわな。それに、実際の会話みたいにリアルな面はあんねんけど、話のオチというか出口になかなか辿りつかへんみたいなとこにも冗長さを感じてしもたわ。普通に台本がある映画やったら1時間ちょっとで終わりそうなんが、1時間半以上になってしもてるんとちゃうかな。

即興劇を採用したんは、その場の緊張感を産み出すために行われているっちゅう狙いは分かるわ。シンデレラ役のナノカの二回の告白シーンなんかはそこそこ効果的やったと思うわ。せやけど、この映画は全体として成功してるとは決して言い難いわ。なんでって、即興劇そのもんに問題があるんや無うて、即興劇以外のもっと根本的なところに問題あるような気ぃする。特にいっちゃん気になるんは話の流れや。プロットちょっとおかしいんとちゃうかな?

まず、ナノカの一回目の告白のシーンやけど、あそこであないするんやったら、その前に演劇の練習なんかをガッツリ真剣にやっとかんとアカンのちゃうか?練習そのもんがぬるいし、結構遊び半分にわしには見えてたさかい、ナノカの告白に対しての皆のリアクションに100%共感でけへんかったわ。ちょっと穿った見方したら、お前ら単に妬んでるだけちゃうん?ちゃう?みたいな。そこまでムキになんのやったらもっとちゃんと真剣にやれよって。

それに、ナノカの告白の後、シンデレラどうなんのってとこやけど、普通やったら当然こうなるやろと思て見てたら、ところがどっこい、そないならへんし。これはちょっとびっくりやわ。伏線もちゃんと張ってんのに何でそないなれへんのって。で、その後のナノカの友達の問題行動やけど、皆が思う通りの流れにしてたら話の辻褄合うのに、そないせえへんかったもんやから、なんか話の流れ自体がおかしなことになってしもとる。ナノカの友達の行動の理由は腑に落ちへんし、なんか唐突過ぎるもんになってしもてる。それに、前述の通り、理由は結局分からずじまいやし。それと、ナノカの二回目の告白シーンやけど、「なんでお前そこおんねん?」やろ?あれは絶対におかしい。ありえへんわ。ナノカよりお前のほうがよっぽどアウトやろって。

この映画やけど、はっきり言うて、プロットやストーリー自体がアカンのを、即興劇でウヤムヤにしてるだけちゃうんか?って気もしてくるわ。そういう意味で言うたら、この映画は即興劇やなかったら、逆に成立せえへんかったかもしれんな。

じゃあ、この映画のええとこ何処や?っちゅうたら、若い役者が皆頑張ってたとこや。特に主演の南沙良去年の「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の主演で光ってた役者さんやけど、今回も同じく引っ込み思案な女の子を上手にやってるわ。最初はボッチで人と上手く喋られへんかったんが、段々明るく前向きになっていく変化を上手いこと演じてたな。それと、泣くシーンで鼻水垂らしてたんも評価するわ。あとは、主人公を演劇部に引っ張ってきたナノカ役の原菜乃華。この役者さんもなかなか存在感あって良かったかな。

最後に、あのウクレレの娘と主人公との会話って即興劇の必要あるか?あれは絶対無いわ。構成上も絶対おかしいし、ウクレレのキャラもぶち壊してる。全部即興劇にする必要なんかないって。分からんかなあ。ありえへんわ。
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