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永遠の門 ゴッホの見た未来のSY3KRのレビュー・感想・評価

3.5
各国の映画祭で高く評価されているジュリアン・シュナーベル監督が、自らのアーティスティックな感性を曝け出し、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの生涯を彼独自の視点で描き出した。

全てにおいてエキセントリックで斬新な試みの目立つ、非常に挑戦的な映画だ。例えば物語はゴッホにとって最も苦しかったであろう、晩年の時期にフォーカスしている。しかも趣味の悪いことに監督はゴッホの表情をズームで真近から捉え、芸術と向き合っている時だけ生気を宿す、その奇妙な輝きを生々しいまでに映し出した。

この映画はとにかく風景の切り取り方が美しいのだが、それらもゴッホの両目というレンズを通すと、時に醜くぼやけて歪んでしまう。ゴッホがその歪みの中に後年傑作と謳われるであろうビジョンを捉えていたかと思うと、中々に感慨深い気持ちが芽生えるが、賛否両論の試みであることは間違いない。

そして本作最大の挑戦は、37歳で死去したゴッホを64歳のウィレム・デフォーに演じさせたことだろう。当初は違和感でいっぱいだったが、見終わった後では彼以外にゴッホを演じきれる人が思いつかない。監督の作り出した世界観に困惑させられ、出口のない迷路を彷徨っているかのような感覚に陥る本作だが、ウィレム・デフォーのパフォーマンスだけは常に力強く揺るがない。

総じて、非常に批評家向きな難しい一作だが、作中の試みはどれもチャレンジングで一見の価値がある。中でもウィレム・デフォーの演技力には脱帽させられるばかりで、深い感銘を受けた。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:79%
・観客支持率 :65%
「ウィレム・デフォーが魅惑的な演技で主役を演じた本作は、フィンセント・ファン・ゴッホの苦悩に満ちた晩年を興味深く描いている。」
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