Mariko

ディリリとパリの時間旅行のMarikoのレビュー・感想・評価

ディリリとパリの時間旅行(2018年製作の映画)
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ミッドナイトインパリのアニメ版みたいなのかと思ったら、
「時間旅行」をするのは観客である我々で
主人公たちは誰も時間旅行はしなかった。
あまりに毎度言ってるので、もう邦題詐欺とは言わない(言ってるしw)。

独特の「動く紙芝居」的な画が素晴らしい色づかいで美しく描かれ
息を呑むような場面がいくつもあった。
パリの夜空に浮かぶツェッペリン号
サンジェルマンの雨上がりの石畳を走る三輪車
クラシカルに艶やかなムーランルージュの踊り子
夕景のエッフェル塔
どれも本当に魅力的だけれど
いちばんは、主人公ジリリがチーターの背中に乗って
サラ・ベルナール(だと思った)の邸宅の中を彷徨っていると、
そこがルソーの描く森になっているところ。
この画を観るだけでも価値がある、と思った一場面。

が、全体を考えるとなかなか評価が難しい。

冒頭からいきなり凄い所に斬り込んだな、と思ったら
作品全体が人種・性差別に始まる社会問題をテーマにしていて
それがまたかなり濃厚にダークな描き方なのだけど
案外ストーリーは軽々とテンポよく(良い意味ではない)進んでいく。

また舞台はベル・エポックのパリで、それはそれは多くの文化人が登場して
彼らが担う文化と知性こそが、そういった問題を克服できるのだ
ということを描きたいのは伝わってはくるのだけど
これまた登場キャラ(笑)が多過ぎて、
悪い表現をするなら顔見せ興行的な印象。

そして上映時間は94分。

一言でいうなら、詰め込み過ぎてバランスが良くないというか。
パリの美しい風景とテーマの重さと、
あまりに多勢のバックグラウンドが豊かな登場人物たちとを
味わい切れずに終ってしまった感。

でも、敢えて重苦しくしないためにそうしたのかもしれない。

なんともいえないのでスコアなし。
Mariko

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