海猫

恐怖の報酬 オリジナル完全版の海猫のレビュー・感想・評価

4.3
クルーゾー監督版と同様、ニトログリセリンをトラックで運ぶサスペンス。しかしリメイクである本作はプロットこそ同じであるものの、ディテールや細部の展開、演出が違うので全く別種の面白い映画に仕上がっている。画面がパワフルな上に禍々しい。見ているだけで呪われそうな何かがある。なので比較的地味な前半も退屈しなかった。トラックでの運搬が始まるとグイグイ引き込まれる。演出がエネルギッシュなのに、爆発しやすいというデリケートな危機があるのが恐ろしい。ちょっとした音、タイヤの下の土や木が崩れる映像に怯える。そうした恐怖は吊り橋を渡る場面で最高潮に。雨と風に揺れる橋を乗り越えようとするトラックが、巨大な怪物のように見えてくる。この状況を実際に作り出して映像に収める狂気。続いて横たわった大木爆破から、なだれ込むように悲惨な状況になったあとのラストまで大いに見応えがあった。クルーゾー監督版が心理劇的な怖さがあるのに対して、フリードキン版はドキュメントタッチの迫力。これまで映画評論本やシネマエッセイなどで「クルーゾー監督作は傑作。リメイクはいまいち」といった趣旨の文章を複数目にしてきたが、こうも面白い作品とは思わなかった。不本意な編集をされたものが公開されたゆえに、良くない評価をされてきたと思う。私はいきなりオリジナル完全版を見ることが出来てよかったが。
海猫

海猫