はなこたちゃん

楽園のはなこたちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

楽園(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

事件や事故の報道はいつも一面的過ぎる
加害者(犯罪者)を忌み嫌い、
やれ「死刑だ」「刑が軽過ぎる」
と声を荒げる事で
彼等は、自分達とは異質の、「悪」なのだと決め付け、
自分は、善人であり、
加害者(犯罪者)とは、
対局の、無関係な存在なのだと
安心したいのかもしれない

本作では、
12年前の少女失踪事件の犯人について
言及していない

一人一人が抱いていた
事件が未解決である事への不安
異質な人間に対する疑心暗鬼が
いざ、1人が発した
「アイツが怪しい」という
声に、反応し、集団の狂気と化する

家庭環境に恵まれず
適切な教育も受けられないまま
特に趣味や特技も持たず
心根は優しいが
上手くコミュニケーションを取れず
周囲から孤立している
この豪士の様な人は
実際少なくないのではないか

豪士と、その母は「楽園」を求めて日本にやってきた
けれど、この母子にとっては、
日本も、ただただ生きにくい場所だったのだろう

「どこに行っても同じ」という豪士の言葉に胸が痛む

一方善次郎は、年老いた親を看取る為、故郷に戻り、限界集落と化した村で唯一の若い者として、よろず屋善次郎と呼ばれ、皆に重宝がられていた

そんな善次郎は、村興しの為に良かれと行動した事から、ボタンのかけ違いが生じて村八分にあってしまう
手のひらを返した様な
善次郎に対する
村人達の理不尽な言動は
まさに、「アイツが怪しい」という
声に反応し、集団の狂気と化した群衆と同じで、
確かな証拠もないまま
思い込みや、噂を鵜呑みにして
自分達の生活を脅かそうとする
異なる存在を
徹底的に排除しようとする
人間の狂気と弱さ
を見せつけられて驚愕する

私達人間は、弱いが故に不寛容ないのではないか

事件報道を見聞きするたびに
私達は、犯人は誰なのか
真相を知りたいと思う
けれど、第3者の私達には
解るはずもない
当事者ですら
解らないかもしれないのに

私達が追い求めているのは
あくまで自分達にとって
都合の良い真実なのではないか


辛い過去を背負って生きていくと
決めた紡
Y字路の先にあるものは分からない
広呂の5年生存率は50%

私達は不安を抱えながら
何かしらの希望を見出しながら
生きていくしか
それしか出来ない

誰もが皆それぞれの「楽園」を求めて生きていく…


原作の豪士に綾野剛さんがピッタリで驚きました
佐藤浩市さんが演じた、
悲しいまでに愚直で孤独な善次郎と健気な犬には
もう胸が張り裂ける様でした😭