逃げるし恥だし役立たず

未知との遭遇 ファイナル・カット版の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

3.5
人間と異星人との接触を感動的に美しく描いたSF超大作。撮影におけるスピルバーグの最高傑作であり映画史における大きな分岐点となった作品。
メキシコの砂漠から幕を開けた物語は世界各地の異変を壮大なスケールで映像化しているが結局、前半は所謂普通の人々は殆ど登場せずにロイ(リチャード・ドレイファス)たち局地的な群像劇に収束されてしまう。だが後半はパニック映画で終わらせずに政府陰謀説やサスペンス的要素を削ぎ落として、遭遇での過程において芸術的な光と音のシンフォニーの中で常軌を逸した巨大な宇宙船が登場するという、77年当時のスピルバーグの子供の様に無垢な未知への憧憬の映像化には驚嘆に値する。
まあ、宇宙人とのコンタクトの方法も根拠がなく微妙だし、宇宙人が友好関係を築くために誘拐・拉致・その他をしましたなんて戦争モノだし、家庭崩壊した後に宇宙へ旅立ったロイの家族は堪ったもんじゃないないし、宇宙人の造形もヘンテコだし、今見ると新鮮味がないかもしれないが、出演者全員が上を向いたり、リチャード・ドレイファスの追い詰めらる演技、踏切での宇宙船の光と静寂の演出など撮影当時の技術を最大限に駆使して未知への畏怖とか畏敬を表現している。特撮技法時代では宇宙人は想像上の仲間であるがCGなど撮影技術の向上により冷戦後の全人類の共通の敵となるのは悲しい限りであり、撮影当時の方が未知に対する純粋無垢な探究心や畏敬や畏怖の念を持ちあわせていたのではと考えさせられる作品である。