黒人差別を扱いながらも、小気味好いコメディドラマに仕立て上げられており、アカデミー賞に相応しい映画。トニーとドクターの軽妙なやりとりに引き込まれた。
感情を押し殺し、冷静であろうとするドクター。言葉では無く佇まいでその内なる感情を見事に表現したアリ氏にシビれた。
個人的に一番好きなのが、ピアノを演奏するシーン。演奏中ドクターは一切言葉を発さない。だが、各々の演奏の前に起こった出来事によって、カメラワークの違いによって、彼の内に秘めた複雑な感情を想起させられた。同じ音楽でもシーンによって聞こえ方が異なった。すごい。
そんなドクターと初めはギスギスしながらも、徐々に打ち解けていくトニーの、昔ながらの粗野な男って感じがカッコ良かった。憧れてしまう人も多いはずだ。
また、60年代の黒人の境遇を全く知らなかったので、勉強になった。昔の差別は「黒人は今すぐ出て行け！」と敵対心丸出しのイメージを勝手に持っていたのだが、皆なんというか「紳士的な」対応で黒人を差別していたのが凄く印象的だった。
