さわだにわか

高校2のさわだにわかのレビュー・感想・評価

高校2(1994年製作の映画)
4.8
このセントラルパーク東高校という学校は対話と論理を超重視したウルトラ民主主義的カリキュラムを組んでるのでミニチュア裁判みたいな形式で下級生の喧嘩の仲裁なんかを教師ではなく上級生が担当する仕組みまであるらしい。アメリカすげえ。これで公立校なのか。

撮影が1992年なので生徒の口からロドニー・キングとロス暴動の話題が結構出てくる。ロス暴動テーマの『マイ・サンシャイン』がこのあいだ公開されたばかりなので偶然のシンクロ、面白いもんですねぇと思っていたら7年生ぐらいのディスカッションの授業で議題が(たぶん)アメリカはどのような人の入国を制限すべきか。
法案を作ってください形式なので無邪気なキッズの口からナチュラルに障害者は入れない法、共産主義者は入れない法、学力テストを受けさせて点数の低い人は入れない法などが飛び出して、面白いどころではないたいへんなアクチュアリティ。
キッズ議会は次第に紛糾、カメラもエキサイティングしてきてスポーツ中継みたいになってくるあたり激アツだったが、それにしても今の大統領の人はこの7年生の子供と同じような発想でお仕事をしているのか…と思うとまた別の意味でもアツかった。

生徒たちが政治活動をできるよう教育するのも自分たちの仕事、と教員。お国柄の違いを垣間見るが、そこにイデオロギーが入ってはいけないし、しかし政治教育とイデオロギーを切り分けるのは難しいと先の発言は続く。
ロドニー・キング裁判に対する平和的な抗議デモを自主的に計画・討議する生徒たちも含め、あまりにも民主主義レベルが高いので羨みながらも(俺とは違う世界に住んでいる人たちだ…)と引いてしまうが、一方で明らかに意識低い系の生徒たちにもしっかりカメラを向けて、ワイズマンの映画だからもとよりそんな心配はないが、理想を垂れ流しているわけではなかった。

映画の豊かさを担保しているのはむしろ意識低い系の生徒たちで、デモを計画するような頭の良い生徒はカメラの前でどう振る舞うべきかよく知っているが、ままならない目の前の生活で手一杯のダメ生徒の方は自分の見せ方を知らない。
虚勢に弱さに笑いに怒りに悲しさにと一つのシーンで様々な表情を見せるダメ生徒たちとその下町喜劇的やりとりはニヤニヤ不可避かつ感動的。
こういうのが多様性ってもんでしょう、こういうのが。意識の高いやつと低いやつが同居する空間が。

いや、素晴らしい映画でした。ちなマイベストシーンは課題レポートをいつも提出しないからついに四者面談に呼ばれてしまった怯えキッズを超こえー母親がめちゃくちゃ叱るので隣で話を聞いていた教師二人が(いやそこまで言わなくても…)みたいな顔をするところです。
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