しゅんまつもと

ジョーカーのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
映画を見る上で、感情移入というのは大事なツールなようでいて、その実とても危険なことである気がする。なぜなら自分の考えや思いもそこそこにスクリーンの中の人物と同化してしまうわけなのだから。そのとき自分はどこにいる?
とはいえそれは人それぞれ楽しみ方があると思うので置いておくとして、感情移入または(自分だったらという)想像力という人間固有の武器を逆手に取った危険な映画であると思った。アーサーに感情移入しきった人がもしもいたとしたら犯罪も何もかも正当化する人が現れてしまうかもしれない。無論それは稚拙で浅はか。この映画はそんなことを伝えたいわけではないはず。

そんなリスクを負いながらこの映画は何を言いたかったのか。それは「考えろ」でしょう。何が正しいのか、何が悪なのか、自分の周りを見渡せ、果たしてスクリーンの中で起きていることはフィクションなのか、寓話なのか。
この映画にオチはない。ここ最近一番嫌いな言葉の一つである「考察」なんてものも一切ない。オチをつけるのは他の誰でもない2019年を生きる我々なのだから。

優れたアートは現実にエフェクトをかける。それをどう使うかは、ぼくら次第。


見るべき映画なのは言うまでもなく。単純な好みとして、自分はタランティーノ の新作やアドアストラの方が好きだったかなぁ。という意味のスコアです。