109mania

ジョーカーの109maniaのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5
悲しき復讐劇。
感想がなかなかまとまらないが、それはイメージ先行でシナリオやストーリーが薄いというわけでは決してなく、それどころか、しっかりとしたストーリーに加えて、印象的な美術的美しさ、圧倒的な演技力、ショッキングな映像の数々、芯があり単一でない複線的メッセージ性など、まさに非の打ち所がなく、私の「映画を見る目」「言語化する力」を超えているからに他ならない。

主人公に自分の姿を投影してみることは、よくある。この映画でも「狂っているのは自分なのか社会なのか」という感じのセリフがあったが自分が正しいと思うことを貫きたいという思いと、単なる自己正当化なのかという自信のなさの狭間で揺れる心境にとても共感した。
アーサーの復讐を、狂気として捉える目線と寄り添う目線とを複眼的に描いているところに感動した。カルト的なカリスマを礼賛するかのような価値観を提示できるところにアメリカ映画の底力を感じる。引っかいたような低音のストリングスが奏でる音楽と60年代か70年代の流行歌を織り交ぜ、観る側の目線を意図的にかき回していたように思った。

果たして感動の涙とは、どんな時に頬を伝うのだろう。この映画を観る中で涙することはなかった。
涙が流れるのは、咀嚼できてるってことなんだろうな。きっと。
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