109mania

落下の解剖学の109maniaのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
 殺人事件なのか、事故なのか。
 いわゆるサスペンスものだが、フォーカスが当たるのは、その謎解きというよりも容疑者の母とその子供の内面だ。
 どんな人も完全な善人も悪人もいない。その両面が心のうちにある。家族でも、親子でも、内面のすべてをありのままにさらけ出すことはなく、自分を正当化し、悪く見せまいとするのは、ほとんど全ての人に当てはまるのではないだろうか。
 この作品では容疑のかかる母親の知られざる一面が、裁判の証拠や証言として、本人の目の前で息子に提示されていく。息子にとっても母親にとってもいたたまれない状況だ。
 そんな状況をそれぞれが受け止めて、咀嚼する。母は有罪なのか無罪なのか、息子は有罪と思っているのか、無罪と信じているのか。ジリジリとする緊張感がみなぎる。そして改めて関係を築こうとする様に、見るものは感情を揺さぶられるのだった。

 法廷モノはドラマでも映画でも大好きだ。この映画もふんだんに法廷のシーンが盛り込まれ、大変見応えのある秀作でした。
109mania

109mania