Aria

ジョーカーのAriaのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0
そもそも悪なのか、世界が悪なのか。
それに順応してはじめて解放されたアーサーの心。彼にとっての正解、笑顔になれる世界を他人が避難していいのだろうか…

表面張力で保っていたアーサーの何かが、溢れ出す映画かと思っていたけれど、最初から小さな滴が溢れてた。

けれどそれは私が幸せな暮らしを送り、満たされているからであって、アーサーと同じ場所に立っていないから「この人は最初から壊れている」と思うのだろうか。

不遇な環境に置かれた事がある人は少なからずアーサーの悲劇に寄り添う事ができるのだろうか…けど世間一般の不幸せレベルではアーサーの気持ちは共感できない気がする…

恵まれた者の世界と不遇な者の世界には大きな隔たりがあって互いに理解する事はできないかもしれない。

少なくとも私は、映画が進むにつれてどんどんアーサーが遠のいていって、ジョーカーが近づいてくる恐怖を感じた。

アーサーが何度かピエロのメイクをしているシーンがある。最初のピエロメイクのシーンでは明らかに泣いているのが分かるけれど、終盤では最早泣いているのか、笑っているのか分からない。笑いも同じ、今の笑いは病気なのかワザとなのか…次第に彼の事が分からなくなっていく。

「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉をジョーカーは昔も今も実行している。手法を問わず…。

気付けば主人公がいなくなっていて、終いには観客を突き放す。そんな映画があっていいのか…。

生まれるべくして生まれた悪
と言ってしまえば簡単だけど
それだけじゃないという引っかかりもある…

ホアキンの身体作りが凄い。
一目見てわかる栄養失調の身体。浮き出る肋骨や、背骨の曲がり方が育ちから生活環境が安易に想像できる。
Aria

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