なかのく

ジョーカーのなかのくのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

10/18 ジョーカー

観賞後、劇場が許してくれるなら15分くらい椅子に座ったままでいたかった。

ラストシーンひとつ手前、車のボンネットに立ち上がり笑うホアキンを見て、「やり切ったーーーーーーー!!ホアキンやり切ったーーーーーーー!!!」という心の叫びが湧く。
すごいのなんの。
ストリートなのもまたいい、「ゼアウィルビーブラッド」とか「レヴェナント」よりずっと身近に感じられる。
今この映画がつくはへた意義は、トランプ政権や安倍政権が関係してるかと思う。
正直俳優というのは、サラリーマンのように世間の風を逃れようがなくあびることがない生き方だからか、"安倍政権反対!"という世間の声はピンと来てない、普通に暮らしてて気になることがないのだから。
でも世間に不満が高まってるのはおそらく確かで、それはこの映画の世相とも重なる。
"社会がつくり出した怪物"
社会情勢だけじゃなく家族関係っていうごく個人的なところにも、ジョーカーがジョーカーになった理由があるところがまたこう胸を掴むというか刺さる。
あんな人生生きてたら俺ならどうなる??
耐えてこらえて生きられてしまったからこそ、ジョーカーになってしまった、っていうのはあるように思う。
いわゆる"不良"のように、パッと瞬発的に発散するとができたのなら、きっとちがう人生だろう。
冒頭、彼は仕事のメイクをしながらラジオのニュースを聞いて泣いていた。確かストライキが18日目で、暴動で人が死んだというような内容、詳しく覚えてないけど、社会が不安的になって苦しむ人々がいることを悲しんでいたことは確か。
仕事中、看板をうばわれ路地裏でリンチ、散々な想いで帰宅しても母には優しい彼。そしてテレビには憧れのコメディアン、マレー。彼との回想、彼を好きになったのは、母が彼を素晴らしいと言っていたから。
翌日仕事に行って、上から目線で見下してくる同僚(彼にはそう見えてる)から銃をもらい、マネージャーに呼び出された彼は昨日仕事中に襲われた件を信じてもらえないことにショックを受ける。募ってる不信感、さらに募る。このシーンの笑顔は強烈。
小児病棟での仕事のシーンの前にあれか、エレベーターで出会った気になる彼女の部屋へ行ってキスをしてたか? 尾行もその前? 彼を受け入れるあの女性はかなりの人間力の持ち主。やっぱ普通に生きてたら彼はちょっと恋愛対象から外れちゃうと思うから。
そんで小児病棟でヘタこいて仕事をクビになる。ツイてない男。"銃を持ってりゃ安心だろう?"人のことばを信じすぎてしまうんだろう。病院の中に持ち込む必要はない、どう考えても。仮に持ち込んだとしてもロッカーまで。ロッカーもないのか? 荷物は人に盗まれてしまう? 不信感ゆえに…。とにかく、ツイてない男。
仕事をクビになった彼は自暴自棄で地下鉄へ。そういやこの映画みてて一度も時計を見なかった、こりゃすごいことだ。地下鉄の中で男3人を銃殺。笑ってしまうクセが、トラブルのもと。彼はこのクセのせいでどれだけ人生を壊されてんだろう。
カウンセラーとの場面もこれより前にあったな。車窓から景色を眺める彼の繰り返しのモチーフもあった、"ジョーカーになった後"パトカーから外を眺める彼のそれまでと全くちがう輝いた目よ。
地下鉄での殺人後、仕事を失った彼はディナーショーのようなライブへ。カウンセリングが打ち切られ薬がないから、すぐ笑ってしまう。笑いがじゃまで全然しゃべれず全くウケない。それでも優しく微笑んでくれる彼女、すばらしすぎない??
だんだん、地下鉄での殺人事件が"ピエロの私刑人"として社会に影響を与えていることを喜んでいる彼。とてもフクザツな気持ちになる、イキイキするのはすばらしいことだが、その方法がゆがんでしまってる。
テレビのトーマスウェイン、そしてマレー。たびたび登場。母親の行動はやったり彼を大切に思ってる人のそれじゃないよな、振り返ってみると。"大事なデートだった"と言う彼の話を全く聞こうともしないなんて。興味がなさすぎる。
マレーがアーサーのネタをテレビで流してイジるのはもう少し後か。母が倒れてから。だからその前に、
・ディナーショーの仕事→デート
・トーマスウェインが父親だと知る
・トーマスウェインの屋敷に行く
・帰宅し母が倒れる
病院でマレーが自分をバカにしたことにショックを受ける。
トーマスウェインに直接会う。母が精神病院に入っていたことを知る。ここでも笑いグセのせいで変なヤツと思われる。
母が入院していた精神病院へ。カルテを見て、母が新しい恋人の暴力から自分を助けてくれなかったこと、母の妄想癖、虚言症を知る。唯一の味方と思っていた母が、ずっと自分を苦しめていたこと。
病院で母を殺し、恋人も殺し(これ実は彼の妄想で恋人ではなかったという説も)、部屋にこもる。警察からはマークされてる。
このへん、それより前くらい、マレーの番組のオファーを受ける。
あとはもう、番組のシーン前の警察との追いかけっこ、番組のシーン、搬送されるシーン、トーマスウェイン殺害のシーン。そしてラストの精神病院の中。

敬意を込めて、あえて呼び捨てにする、ホアキン、すごい。
やり切ってる。
プロットも完璧では? ジョーカーの人生をこんなにふくらますなんて。しかもスムーズで洗練されてる。
彼は、人を笑わせたかった。
障害、急に笑い出してしまうクセ、病気の母、荒んだ社会。

すべてがひっくり返る、だからジョーカー?
心が泣いてる時でも笑う彼のその様子が涙。
"どうしてみんな僕を邪険にするんだ、僕に必要なのは暖かいキスとハグだよパパ"
ジョーカーは弱い、けど強い、何が強く何が弱いのか、よくわからなくなる。彼が言うように、それも主観なのか…?
現代のジョーカー、生まれてほしくない。うまれてしまう社会にしたくない。
最強の反面教師、そう思おう。
なかのく

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