センチメンタリス

ジョーカーのセンチメンタリスのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0

コメディアンにはふたつある

自らの悲劇を世界の喜劇にする役者
彼をピエロと呼ぶならば

世界の悲劇を自らの喜劇にする役者
彼をジョーカーと呼ぼう

「この世界はすべてこれひとつの舞台、人間は男女を問わず、すべてこれ役者にすぎぬ」(All the world's a stage, And all the men and women merely players.)(シェイクスピア「お気に召すまま」)

わたしは未だ彼を怪物とは呼ばない

「フロイトはすべては夢だけだと考えた
すなわち人はみな(もしこの表現が許されるなら)
ーー人はみな狂っている
すなわち人はみな妄想する」
Freud[…] Il a considéré que rien n’est que rêve, et que tout le monde (si l’on peut dire une pareille expression), tout le monde est fou, c’est-à-dire délirant (Jacques Lacan, « Journal d’Ornicar ? », 1978)

もう一度言おう

人はみな妄想する、のである

ただ、最後の精神科医とのカウンセリングのシーン
あの笑いだけは、ジョーカーという怪物の”この世”の生誕を祝う

心から湧き上がるそんな笑いではなかったろうか

自らの役の悲劇に耐えられなくなった人間はステージを降りて、自ら現実世界の悲劇を創造する

いや、それすらも荘子のいう「胡蝶の夢」なのかもしれないが…