ピッツア橋本

こども食堂にてのピッツア橋本のレビュー・感想・評価

こども食堂にて(2018年製作の映画)
4.5
“ナミダを止めるな!ドキュメンタリー風濃厚社会派ドラマがひっそり登場”

ドキュメンタリーかと見間違えるくらいテーマにリアリティある社会派ドラマ。だがしかしかなり泣ける。しこたま泣いた。

まあこれはもしかしたら主人公の境遇がまあまあ自分と似ていて、それなりに家族の痛みを噛み締めているからかもしれないけど、そこは省略。

はたして
子供は生き甲斐が重荷か、
社会は彼らに家と学校以外の居場所を提示できているのか、
その二大テーマを真摯に追っている映画だと思う。

題名のこども食堂なる施設が実在し、あらゆる家族の問題で悩む子供たちに無銭で食事を振る舞うという生活設定にフォーカスを当てているのがとても好感が持てる。

こういうのって必ずしも虐待と貧困だけが問題じゃないんだなあと勉強にもなった。

あえて雑に印象を述べると子供たちのための『深夜食堂』。大人のやり切れなさと子供の所在なさが交差して、人情や理性を掘り起こされるステージ設定になっているよね。

メッセージ性が強過ぎるあまり、若干キャラクター達の言動がいささかストレート過ぎて鼻じらむ時もあったけど、本作は言ってる内容とエピソードが大事。

かなりな密度の生活感イメージを提示し、想像させてくれるので中々えぐられる。

そこまで説教臭くなく社会問題を考える契機を与えてくれてると思った。

自分は未婚だし子供もいないけど、今後どう自分の大切な人の人生に入っていけるだろうかと真剣に考えてしまった。

正直、主人公よりサブエピソードの方が強くて泣けるんだけど、彼女の抱えてる問題って絶対解決しない事だから、逆に余韻を感じて良かった。

朝イチで観に行っても満席、そして場内の端々からむせび泣く声から本作のパワー、静かな熱量を感じ取れた。

本作がシリアスなポジションでの『カメラを止めるな!』になって欲しいとは切に願う。
ピッツア橋本

ピッツア橋本