ピッツア橋本

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのピッツア橋本のレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
4.8
"岸辺露伴は忘れない"

岸辺露伴が"この世で最も邪悪な黒を描いた絵"の在処を求めてルーヴル美術館に行くサスペンス。

あのTVシリーズのデラックス版でもあり、日仏を行き来するダヴィンチコード的な骨董品サスペンスでもあり、悲しい御伽話を見た後の美しいホラーを観たような気にもなる。

そしてシャーロックホームズとワトソンのコンビを観ているような岸辺露伴と泉鏡花の掛け合いが凄くいいと思った。

前半の露伴青年期の日本旅館がどのカットも挑戦的で美しく、木村文乃演じるななせの悲しさ妖艶さが幻想的。

後半のルーヴル美術館の荘厳さ、光の裏にある広大な闇に絶妙なリアリティとミステリーを足した感じが良かった。

ただのスタイリッシュな作品なのかと思いきや、贖罪や過去の因果にも触れていて、キャラクター達の心の浮沈にも合点がいく。

この映画、1.5h頃のあのカットで岸辺露伴らしく終わるのかなと思いきや、
エピローグ的なあのラスト30分で全ての伏線が綺麗に、まさに画竜点睛の点が押される感じが良かった。
本当にすごく腑に落ちた。

あと泉鏡花ちゃんのあの慰みの言葉には大号泣した。そうか、そんな想いで君はルーヴルに来たのか。

とにかくこの映画の細部に宿る拘りや美が全部、自分には深く突き刺さった。書いてる今でも余韻が残る。

ネタバレギリギリの考察を書くと、ななせに原作四部のレイミさんと同じ儚い母性を感じた。
だから君を忘れないよ、と言ったのではないだろうか。
その心に拭えない黒と恋心の入り混じったピンクダークを抱えながら生きる事を良しとしながら。

本当に好きな余韻の残る作品でした。
ピッツア橋本

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