みりお

プライベート・ウォーのみりおのレビュー・感想・評価

プライベート・ウォー(2018年製作の映画)
4.1
Filmarks試写会にて鑑賞♫

大学での専攻はジャーナリズムだったこともあり、「伝えたいことが伝わらない」もどかしさは、それなりに深く勉強してきたつもりでした。
報道規制やジャーナリズムの役割、ステレオタイプの危険性…伝えたいことが伝わらない理由は様々。
だからこそ罠にひっかかることなく、伝えるべきことを伝えなければならないと思っていました。

でも私が伝えたかったことはなんだろう。
虐殺される市民の声をどうしても聴きたい、伝えたいと思ったことはあったのだろうか…いやありませんでした。

当時は、それほどのことを伝えられる人は、固い信念と聖人君子のような心、そして理想的な正義感持った人なんだと考えていたからです。
つまり自分はそうはなれないと思っていたし、なろうと考えたこともありませんでした。
どこか他人事というか、ジャーナリズムを勉強しているにもかかわらず、やはり受け手の視点が抜けきらなかったというか…

けれど戦争報道にその身を捧げた本作の主人公、メリー・コルヴィンを観ていて思ったことは、これだけのことを成し遂げた人も迷いだらけだったんじゃないかということ。
側から見たら強く見える人も、これでいいのか?伝えたいことは伝え切ったか?まだ伝えるべきことはあるんじゃないか?と迷いに迷いながら、それでもがむしゃらに伝えたいことを追って、正解を探し求めながら伝えていたんじゃないか。
強いから伝えられるんではなく、強くあろうと必死にいるから伝えられるんだ。
メリーの背中からそんなことを感じました。

人生の中には選択が数え切れないほどあって、どちらかを選べばどちらかを失います。
命の保証がある平凡な仕事に就く私にだって毎日選択はあって、毎日後悔があります。
こういう発言をすべきじゃなかった…とか、このまま仕事をしてていいのか…とか、人生の次のステップにはいつ進もう…とか、迷いだらけ。
それは私が平凡だから迷ってしまうんだと思っていました。
世界を動かす仕事をしている人たちは、こんなこと考えないんだろうなと。

でも、それは違うな。
メリーと私の決定的な違いは、選び取る強さがあるかどうかということ。
誰だって迷うんです。
メリーだって子供を欲しがってた。
メリーだって平和な時間を欲しがってた。
それでもメリーは、伝えるべきことを選び取っていました。
PTSDに悩まされ、アルコールとタバコに依存し、体がボロボロになってでも、彼女は選択を怠っていませんでした。

誰の人生もスタートは同じ。
しかし彼女のように、選択を怠らない人生を送ってこそ、その人生は強く美しいものになっていくのだと感じさせてくれた作品でした。

毎日ニュースで当たり前のように知ることができる世界の情勢。
それをボタン一つ押すだけで観られるのは、そこでカメラを回した人たちがいるから。
メリーのような人たちが、これが自分の伝えたいことだと選びに選び抜いて切り取ったシーンなのだと考えると、お煎餅ポリポリ、お腹ポリポリしながら観てた自分に激しく反省。
彼等の選択を糧に、私も何か一つ新しい選択をできるように報道を受け取っていけたら、平凡な私の人生も少し変えることができるのかもしれません。


【ストーリー】

The Sunday Times の特派員メリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)は、スリランカ内戦を取材していた2001年に左目を失明する。
PTSDに苦しみながらも、世間の関心を紛争地域に向けるために彼女は戦場を駆け巡る。
2012年、シリアで過酷な状況下に置かれた市民の現状を世界に発信しようとホムス入りしたメリーは、命懸けのライブ中継に挑む。


【キャスト・スタッフ】

*監督:マシュー・ハイネマン

アメリカ出身🇺🇸
現代アメリカの若者に焦点をあてたドキュメンタリー『Our Time』で長編監督デビュー🌟
メキシコ麻薬戦争を追った『カルテル・ランド』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされ、その他多くのドキュメンタリー賞を受賞。
その後シリア内戦における市民ジャーナリスト集団RBSSとISの戦いに迫った『ラッカは静かに虐殺されている』でも数々のドキュメンタリー映画賞を受賞しているようです✨
本作は彼にとって初のストーリー仕立の作品ですが、戦場のシーンがあまりにリアルだったのは、彼の経歴から来ているのだと感じました。


*メリー・コルヴィン:ロザムンド・パイク

素晴らしい演技でした✨
もちろん見た目もだし、なにより声!!
最後に本人のインタビュー映像が流れるのですが、それが実は冒頭の音声と同一だったと知って衝撃😳‼️
冒頭の音声は、劇中のロザムンドの声と全く同じで、ロザムンドが喋ってるものだと思ってました💦
メリーをとことん研究し、メリーに寄せていったロザムンドの演技に拍手でした👏
ロザムンドはイングランド出身🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿
父はオペラ歌手、母はバイオリニストであることから、本人もピアノとチェロは相当な腕前で、しかもオックスフォード大を優秀な成績で卒業したという素晴らしい才能✨
舞台畑出身で、大学在学中にシェイクスピア作品などを各国で上演する活動を行なっていたそうです。
2002年にボンド・ガールに選ばれたことで映画界に進出、『007 ダイ・アナザー・デイ』で映画デビュー🌟
2014年の『ゴーン・ガール』でアカデミー賞にノミネートされ、数々の映画賞も受賞したことから認知度を高めました✨
その他の出演作は『プライドと偏見』『タイタンの逆襲』『ナチス第三の男』など。
10月に公開予定の『エンテベ空港の7日間』にも出演しています。


*ポール・コンロイ:ジェイミー・ドーナン

メリーと行動を共にしたカメラマン。
ともすれば暴走しがちなメリーに対して、冷静にフィルムを回し、戦場のシーンに安定感を与えてくれていました。
ジェイミーは北アイルランド出身。
カルバン・クラインなど有名ブランドのモデルを数々こなし、2005年に俳優活動のために渡米。
その際のルームメイトはあのエディ・レッドメインだったそうです💕
(なんて美しい部屋😍❣️笑)
2006年に『マリー・アントワネット』のフェルゼン役で映画デビュー🌟
その後は映画出演の機会が多くありませんでしたが、2015年の『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』で知名度を一気に上げました✨
今年の秋公開の『フッド・ザ・ビギニング』にも出演しています💛


*ショーン:トム・ホランダー

「The Sunday Times」の編集長。
イギリス出身🇬🇧
子供の頃からミュージカル劇団に所属しており、1981年にBBCのドラマ『ジョン・ダイアモンド』で主人公を演じて本格的に俳優デビューしました🌟
映画デビューは1996年の『トゥルー・ブルー』。
その他の出演作は『エニグマ』『ゴスフォード・パーク』『プライドと偏見』『エリザベス:ゴールデン・エイジ』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』『ボヘミアン・ラプソディ』『バード・ボックス』など。
あとはなんと『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのベケット卿でした😆


*トニー:スタンリー・トゥッチ

トゥッチーーーーー😍元祖イケメンハゲ🎉
本作ではメリーの恋人役を演じていました。
トゥッチは米・ニューヨーク州出身🇺🇸
高校時代から演劇部に所属し、大学卒業後の1982年にブロードウエイデビュー🌟
そして1985年に『女と男の名誉』で映画デビューしました。
その後名バイプレイヤーとして数えきれない作品に出演していますが、2009年の『ラブリー・ボーン』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました👏✨
その他の出演作は『ペリカン文書』『ロード・トゥ・パーディション』『ザ・コア』『Shall We Dance?』『プラダを着た悪魔』『バーレスク』『ハンガー・ゲーム』シリーズ、『美女と野獣』など。
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