にしやん

パリ、嘘つきな恋のにしやんのレビュー・感想・評価

パリ、嘘つきな恋(2018年製作の映画)
3.7
仕事はできるが遊び人の男性と、車椅子の女性との恋愛もんや。立って歩かれへん女性に恋した、“嘘つき”なおっさんの話やわ。
障害者を題材にした映画はそこそこデリケートな問題を含んでるわな。「障害者をこんな形で映画に引っ張りだすんてどうやろ?」と悩むやろ。特にこのストーリーやったら主役のおっさんのキャラが引っかかるんやろな。このおっさんは自分も車椅子の障害者やと嘘ついて、車椅子の女性とのつきあいを続けようとするんやけど、こんなん一歩間違えたら不謹慎やということになりかねへん。そういう意味で言うたら、このストーリーはそこそこ難しいことやってるんかもしれんな。パンフレットに書いてあってんけど、この映画の監督(主演でもある)さん「愛をもって相手を見れば、際に対する偏見は消えることを伝えたい」っちゅうのを訴えたかったんやそうや。確かに映画を観てても「これはスレスレやな」とか「ちょっとブラックかも」というセリフが一杯出てくんねんけど、片方は嘘とは言え、車椅子の2人が交わす会話は、全く不愉快やなかったし、自然やし、嫌味なくクスッと笑える感じやったな。ユーモアで障害っちゅう偏見を消し去ろうっていう目論みは、そこそこ成功してるんとちゃうかな。セリフとかジョークとかも相当配慮して書いたんやろと思うわ。特に障害者の自虐ネタみたいなもんも結構出てきたんやけど、両方車椅子っちゅう設定にしたからこそ、上手いこといったんかもしれへんな。この辺の監督のセンスは中々のもんやわ。
それと中盤に出てくるキスシーンは思わずハッとしたな。映像が綺麗なんもそうやけど、「あー、こないしたんやな、うまいこと考えよったな」っちゅう感じやな。これはええシーンやったわ。一本取られたで。でもちょっと「タイタニック」に似てるけどな。
それと話の構造として、好きになればなるほど罪の意識に苛まれて、どんどんほんまのことを打ち明けられへんようになる展開なんやけど、最後はちゃんと晴れやかな気分にさせてくれるわ。
ラストもええで。そうそう、この映画の原題は「Tout le monde debout(皆さん、立って)」やったな。バッチリやんか。ほんま決まってるわ。
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