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草の葉のmasatoのレビュー・感想・評価

草の葉(2018年製作の映画)
5.0
素晴らしい。
カフェで、人の会話を盗み聞きするキム・ミニ。客観的な視線と、落ち着いた感情を持った女性なのかと思えば、自分のことはなかなか計算できず、弟を彼女の前で罵倒してしまったりもする。
淡々とみんなが死について、生きることについて語る。受け入れられること、受け入れられないことについて語る。
さりげない、いつものズームが、そぐわない音楽と共に、僕らの人生のチグハグさを笑っているようだ。

作中、「あんたの恋人が死んだのは、あんたのせいだ」とある女性が、中年の親父に怒鳴られる場面がある。その直後のシーンで、その女性が1人、部屋の中の階段を登っている。登り切ったら、降る。それを1人で繰り返している。何回も登ったり降りたりを繰り返しているうちに、深刻な顔をしていた女性が、少し笑う。

この場面に既視感をもって、思い返してみる。すると、僕自身、打ちひしがれて地下鉄の階段を降っている時に、そのリズムになんだか笑ってしまったことがある。あれだな、あれだよね、と思っているうちに、また、ホン・サンスに心をつかまれてしまっている。

あの場面、ものすごく小津安二郎の匂いがする。
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