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テルアビブ・オン・ファイアのShinMakitaのレビュー・感想・評価

1.8
1967年、イスラエル。パレスチナの女テロリスト・ラヘルは、同志であり恋人でもあるマルワンの指示でテルアビブに潜入した。ユダヤ系フランス人の偽装身分で、イスラエル軍将軍イェフダに接近し、機密書類を盗み出すのが目的だ。しかしイェフダと時を過ごすうち、彼に恋心を抱いてしまうラヘル。任務と愛の板挟みとなった彼女は、果たしてどちらを優先するのか⁈


…というのが、いまパレスチナで高視聴率を叩き出しているテレビドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」のアラスジである。エルサレムからスタジオのあるラマッラーへ通っているアラブ人青年サラームは、ヘブライ語ができるということで、その脚本助手として雇われていた。ある日彼は、帰宅時に必ず通るイスラエル軍検問所でドラマのセリフである「爆発的」というフレーズを口にしてしまい、詰所に連行され尋問を受ける羽目になる。尋問官は、検問所長のアッシというイスラエル軍兵士。アッシはサラームが「テルアビ」の脚本家と知るや、ノリノリで今後のストーリー展開やセリフに口を出してきた。実は「テルアビ」はイスラエル国内でも主婦に大人気。アッシは、自分のアイデアが採用されたらドラマファンである妻に尊敬されるだろうと考えたのだ。ほとんど脅迫に近いアッシの要望を聞きながら、ドラマとしての整合性やパレスチナ受けのする展開にしなくてはならなくなったサラーム。果たして彼は、誰もが納得する最終回の脚本が書けるのか⁈



という「テルアビブ・オン・ファイア」。

以下、爆発的なネタバレ。

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イスラエルとパレスチナ自治区の関係について、知らないことをいくつも教えてくれた一本。普通にエルサレムにもアラブ人は住んでいて、日常的に検問所を通って自治区に行って帰っての生活を送ってる、ってのがまず「へぇ〜」って感じ。立場的にはイスラエルの方が上、パレスチナ人は抑圧される側、なんだろうけど、アラブ人たちもドラマを通してイスラエル人をやり込めているという設定が面白い。スポンサーも視聴者もパレスチナ人だからパレスチナ人が納得する展開で親ユダヤな描写は極力避けて…というのが前提なんだけど、そこにイスラエル人が口出ししてきて困るというのがキモなんです。イスラエルもパレスチナも納得する落としどころを探るというのは、さながら和平交渉のメタファーのよう。政治的なネタをマイルドな笑いに包んで楽しませてくれた佳作でした。
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