Inagaquilala

堕ちた希望のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

堕ちた希望(2018年製作の映画)
3.6
東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。冒頭の映像が印象的だ。溺れて船に引き上げられる女性が、まるで空中に浮いているように見える。実は、網ですくっているということがわかるが、このファーストシーンがそのまま主人公の女性の運命を暗示している。全般的に暗い映像で、どうやら主人公のマリアは、犯罪組織の末端で働いているようだ。舞台となっているナポリの近郊カステル・ヴォルトルノは、治安の悪い場所らしいが、海と川が交錯する場所で、その寒々しい風景のなかで、主人公は過酷な人生を生きている。

監督はイタリアのエドアルド・デ・アンジェリス。ナポリの生まれらしいが、風景描写に対するこだわりは映像から伝わって来る。冒頭のようなファンタジックな場面と主人公の暮らしを描くリアリズムが、妙なマッチングで、力強い作品をつくっている。イタリア映画とは思えない、湿度の高さは特徴的。観た後に、がつんと重いものを感じさせる作品だ。
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