1912年のUK。娘の婚約を祝う実業家の家族に警部と名乗る男が、ある女性の自殺を告げる。家族全員が間接的に加担したと知らされ、お通夜ムードに──取り澄ました富裕層を批判し、彼らの利己的な行為が下流の人々を苦しめ、彼ら自身をも危うくするという教訓を垂れるプリーストリーの戯曲をベースにしたミステリ&サスペンス。尚、それらの行為とは、職場でストライキ煽動したから解雇した、イラついたので職場にクレームを入れた、貧しい女に施しのつもりで援助交際した、嘘をついているので援助しなかった、等──個々に強い致死性はなく、それどころか立場によっては正当ですらもあるが、それらがピタゴラスイッチして酷い結果に繋がるのが本作の興味深い所。“噛み合わぬ善人の思いやり”がO・ヘンリーの「賢者の贈り物」だとすると、さしずめ“噛み合った俗人の冷たさ”が本作。最後の2回ドンデン返しオチは、現代目線ではいささか寓話性が強すぎるきらいもあるが、けだし古典の風格のある逸品。