スカポンタンバイク

青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ないのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

3.4
高評価の人の気持ちは分かるし、そこにグッとこなかったわけではないんだが。

端的に、意味が分からない。

まずよく分からないのは、この映画におけるタイムシフト?夢オチ?だろう。ここが「?」になるように、この映画は夢から覚めると過去に飛ぶ描写がある。つまり、実際に起こってる事がタイムシフトなのか、夢オチなのかがハッキリしないのだ。説明を聴く限りではタイムシフトなのだが、そうすると一番の疑問は「どこからどこまでが夢なのか?」という事である。なんか「インセプション」でも同じようなことを思ったなぁと思い出したのだが、あれは一応起点となる現実タイムラインが存在してるため、夢と時間の原理がはっきりしていた。今作はその起点すらないから、究極言うと、主人公が気の済むまで「夢」って事にしてしまえば、いくらでもハッピーエンドをでっちあげられるのだ。
それってズルくない?
もう一つ、この夢オチタイムシフトがズルいと思ったのが、要は起こった未来を夢オチにして過去に飛びっぱなしだから、所謂タイムリープものであるあるのバタフライエフェクトみたいな事はない「ことになっている」のだ。「ことになっている」というのは、ラストまさに全リセットみたいな事を主人公がやってのけてしまうのに、その後の人間関係が何一つ変わっていないからだ。そんなバカなw
あと、このタイムシフトは4日前に戻る時は記憶を持ち越せていたのだが、ラストの主人公は牧之原さんのことを忘れていた。あれは何故なのだろう。飛ぶ時間が長いと記憶の持ち越しに制限がかかるのだろうか。

といったSF的なギミックが本当によく分からないのだ。ただ、まぁ多分ここがそんなに重要ではないというのは私でも分かっており、要は「どっちのヒロインを助けるか?」的なギャルゲーイベントのエモーションが肝なのだ。
しかし、前述したように、後悔した過去はリセットされてしまうので、そうなると「そこまでの悲哀はなんだったんだ!?」となってしまい、挙げ句それが繰り返されると、今起こってる事にあまり真摯になれないのだ。ラストがよく分からない中、大団円になってしまうのもあり、結局リセットの末に大団円エンドがあるなら、別に選ぶもクソもなかったよねと、真摯になる事が馬鹿らしくなってしまう。だからこそ、そういうSFギミックのルールはちゃんとした方が良いと思った。

まぁ、SF的な事は百歩譲って、エモーショナルな部分は良かったと思う。みんな頑張ってたし、主人公が走り回って頑張ってたし。TVシリーズでも思っていたが、主人公の思い立ったら電車に乗って彼女に会いに行くという行動力には、毎回相当燃えるものがあった。牧之原さんのエピソードは直近「君を愛した一人の僕へ」を観ていたのもあり、似てるなぁとか思った。
ただ、牧之原さんの思春期症候群には「うーん」というものがある。これまでの話って、基本的にオカルトで、あるかもしれないしないかもしれないという、「気のせい」なものになっていた。それが牧之原さんの場合、大学生の彼女を主人公以外も認識している、実際存在するものになっているため、そうなるとそれは「気のせい」なものにはならない。これは「物語シリーズ」にも思った事ではあるのだが、話を広げるためのインフレの結果なんだろうなぁと感じた。

個人的には色々モヤっとする所はあるものの、TVシリーズの拾い損ねた伏線を回収した良い作品だったのかなぁと思いました。