悪魔の毒々クチビル

サマー・オブ・84の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

サマー・オブ・84(2017年製作の映画)
4.5
1984年夏、デイヴィ少年の住む町では子どもを狙ったシリアルキラー''Cape May Slayer''が話題になっていた。
ある日、隣人の警察官マッキーの家でちょっとした手伝いをしていたデイヴィは、地下室に南京錠の着いた部屋を見つける。
更にその後、彼の家に自分と同い年くらいの男の子がいるのを目撃する。
後日、その男の子が行方不明になったことを知り、実はこのマッキーこそがCape May Slayerなのではないかと疑い出し、友人らとともに捜査を始めるのだが…


「ターボ・キッド」の製作陣RKSSがお送りする今作は、80年代を舞台にしたサスペンスホラー。

まず、デイヴィら子ども達のキャラが超ベタなのが最高でした。
インテリメガネ君、ムッツリおデブ、Bad Guy風なやつ、それとデイヴィが想いを寄せる美人な幼馴染み。
これ、Bad Guyなイーツ君を除けば完全にズッコケ三人組でしたね。

皆でマッキーの一日の行動パターンを把握するために、分断で尾行して彼の動きを必死にメモったり、トランシーバーで連絡を取り合ったりと、この手の子どもが主人公な青春映画好きには堪らない小規模なドキドキワクワク感溢れるシーンが満載。
その時に流れるレトロで楽しいBGMは、「ターボ・キッド」にも通ずるものがありました。

デイヴィが部屋で双眼鏡越しにマッキーの家を覗きながら「見張ってるからな、こんにゃろう」とキメ顔で呟くのですが、ふと下を見ると幼馴染みが「ちょっと外出てきてよ」と手招きしているのを見て思いっきりニヤけるシーンが本当に笑えました。青春だねぇ。

と、ここまではこういったベタベタな演出を楽しんでいたのですが、この映画は途中から段々とダークな一面を垣間見せていきます。
そう、この映画、かなり重いんです。
なので「グーニーズ」とかああ言うハッピーなものを求めて観ると、とんだしっぺ返しを喰らいます。
そういった場面ではあのお気楽な音楽は鳴りを潜める訳ですが、一ヵ所、トランシーバーの混線する雑音がそのまま不安を煽るBGMとして機能していた場面があったのが印象的でした。

どこがどう暗いか、あまり詳しくは言及しませんが、この作品では子どもが抱いた好奇心に対する代償をしっかりと描いていました。これが非常に良かったポイントです。

子ども達が主人公の映画って、物語の登場人物もそうだし、何より観ている我々も一種の安心感を持っていると思うんですよね。だから心に余裕を持って観れるし、人によっては物思いに耽りながら楽しめる。
ところが今作は、そんな感覚を持たせておきながら途中で思い切り叩きのめされるんです。

自分たちがやっていることが如何に危険なことなのかを真に理解しないまま、スパイ気分で行動していく彼ら。その先に待ち受けるものを、王道パターンで誤魔化さずにダークかつある意味リアルに描いたという点が素晴らしかったです。

こういう映画でこの着地点って、あまり無いような気がします。
受け入れ難いかもしれませんが、個人的には声を大にしてオススメします。