にしやん

サマー・オブ・84のにしやんのレビュー・感想・評価

サマー・オブ・84(2017年製作の映画)
3.2
1984年、アメリカの郊外を舞台に、連続殺人事件の真犯人捜しに挑む少年たちのひと夏の体験を描いたジュブナイル・ホラー映画やな。

まずこの映画を観て思い出したんは、80年代を代表するジュブナイルの名作「スタンド・バイ・ミー」や。本作の「サマー・オブ・84」やけど、わしには「スタンド・バイ・ミー」のオマージュというか、ブラックパロディ版にしか見えへんへんかったわ。「スタンド・バイ・ミー」の原作はスティーブン・キングやけど、彼には珍しい非ホラー系の作品や。もしスティーブン・キングが「スタンド・バイ・ミー」をホラーにしてみたらどうなる?っていうのをおもしろおかしくやりたい放題で作ったらこないなりましたって感じやな。本作の制作陣って、一部のマニアに人気を博した、チャリンコ版マッドマックスこと「ターボキッド」を撮った「RKSS」っちゅう連中みたいやから、まあそれくらいのことはやってくれるやろな。

まず「スタンド・バイ・ミー」は有名やから知ってる人は多いと思うけど、50年代後半か60年代前半のアメリカの郊外を舞台に仲良し4人組が小学生最後の夏休みに、こっそり聞いて知ってしまった死体のある場所を探す冒険に出かけるちゅうんがストーリーで、少年から思春期にかけての頃のかけがえない時間や友情を描いてて、ほろ苦い何とも言えん切ない気持ちにさせる映画やったな。

本作やけど、まず人物設定がそっくりや。「オタク(≒物書くの好き)、メガネ、デブ、ちょっと不良っぽい」やもんな。殆ど同じや。本作ではヒロイン役の女の子が一人出てくるけど、そこだけがちゃうな。舞台設定は年代は違えど、アメリカの郊外というんも同じ。探しに行くもんにしたかて「死」が関係してるしな。あえて真逆になってることもある。活動時間帯が「夜」と「昼」で逆、探しに行く場所が「隣」と「遠く」で逆や。

それと、彼らの持ってるもんやらツールに時代を感じたわ。今やったらインターネットやスマホで済むもんばっかりや。トランシーバー、牛乳のパックの印刷(?)、エロ本、それにごっついビデオカメラとか。懐中電灯かて今日日スマホやもんな。 今の我々の時代では絶対に味われへんもんのオンパレードや。事件の真相をちょっとづつ自分等の手で手繰り寄せていくようなおもろさみたいなもんが、あの時代には確かにあったんやなと。

わし、ほんま「スタンド・バイ・ミー」のアナザーストーリーやなと思て、ニヤニヤして観てたわ、正直途中までは。あー、「スタンド・バイ・ミー」と同じで、「青春ってほろ苦いもんやな、こんなもんやろな」と思いながらや。アメリカの青春もんって、日本のとは違て、青春の否定までは言わんけど、大人になるってそんなに甘いもんやないよって感じの青春の終わりやら別れ、苦々しさみたいなもんを描いてんのが多いような気がすんねんな。日本のは、青春ってキラキラ輝いているもん、あの時代は良かったね、人生でいっちゃん美しい時間やね、懐かしいねということになるねんけど。

ところがどっこい、「サマー・オブ・84」。途中までは「ほろ苦い」やったけど、最後の最後蓋開けてみたら、なんやこれ。「ほろ苦」どころか、これじゃ「ウルトラデスソース」級の「超激辛」になっとるがなー。誰もこんなオチ欲しないわ。当人達にしたら一刻も早く消し去りたい黒歴史になっとるやないか。流石は「ターボキッド」を撮った連中やわ。ただでは済まんな。あー、ほんまえらいもん観てしもろたわ。この連中、「スティーブン・キングさんかてここまではせんやろ」っておもしろがってる、そんな感じとちゃうか。ほんまに、かなん連中やで。わしかて、青春って甘いもんやないっていうは結構好きなんやけど、ここまでやったら、正直しんどいわ。

こういう話になってまうと、要らん事はせんほうがええみたいな教訓めいた話になりかねんけど、まあやってしもたことはしゃあないってことなんかいな。好奇心かて時と場合によりけりや。人生なかなかきびしいのー。
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