九月

運び屋の九月のレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.4
90歳になる主人公のアールが、お金や仕事より、何よりも大切なものにようやく気が付く。ストーリーはシンプルで、描かれているものもかなり直球だと感じたけれど、すとんと入り込んできた。

主人公のどっしりと構えた佇まいや、アメリカの広大な景色など、内容とは裏腹に、見ていてとても心地が良い。
犯罪に加担することは擁護できないものの、スリリングな展開もとても楽しめた。アールの視点、麻薬カルテルの内部事情、麻薬取締局の緊迫感、常にハラハラしっぱなしだったけれど、人生の大先輩アールの余裕たっぷりな様子や、状況にそぐわない気楽さに、ふと気が緩む。
麻薬カルテルのメンバーと仲良く?ポークサンドを食べるシーンがとても好き。普段はサンドウィッチをお店で食べようと思うことはほとんどないのに、たまらなく食べたくなった。テラス席でかぶりつきたい。
また、車で流れている曲を口ずさみながら運転している姿を見て、(運んでいるものはさておき)あんな風に歳を取りたい、と何度思ったことか。

取締局の捜査官であるコリン・ベイツとの関わりも良かった。絶対に捕えなければならないと追う相手でありながらも(初めはそうとは知らないものの)、自分の倍近く生きてきたアールに対する敬意が窺える。だからといって捜査の件では容赦はしない、それでも、最後にアールに向けた眼差しには尊敬や憧憬も入り混じり、見ているこちらの気持ちとも通ずるように思えた。
九月

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