たぬき

アートのお値段のたぬきのレビュー・感想・評価

アートのお値段(2018年製作の映画)
4.2
邦題は分かりやすいように「アートのお値段」ですが、原題ではEverythingのお値段。何にでも値段がついてしまう、本来なら価値のつけようのないものであっても…。これぞ資本主義だ!とも言えますがなかなか末恐ろしい世界です。

現代アートは供給が(古典と比べて)大量に進行形で存在するので、希少性という点ではあまり値段が釣り上がらないはず…
作品そのものの魅力に値段をつけているというよりは、この作品は〜万ドルの価値だ!と言ってしまえば、みんながそれを信じて一気にそこまで跳ね上がる理屈のように思います。

クーンズ氏のようにビジネスライクなアーティストであれば、割り切って上手く波に乗れるのでしょう。が、芸術作品としての価値を評価して、色々な人に見てもらいたいアーティストと美術館関係者には、制御の効かない理不尽な状況ですね。値段が上がればアーティストの生活には良いかもしれませんが、美術館への収蔵など文化的価値が保護できなくなってしまいます。そして文化的価値よりも資本的価値が優先されると、アートはもはや不動産や株と同じ、もしくはそれら以上に操作された投機対象と見なされる…果たしてそれがアートのあるべき姿なのでしょうか?
現代アートだけでなく行き過ぎた資本主義経済についても考えさせられる映画でした。
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