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蜜蜂と遠雷のmoekoのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
5.0
本当は原作を読んでから映画を観たかったけど、今日でアマプラの見放題が終わりということで鑑賞。
何と言ったら良いのか。この作品について言葉で表現するのは難しくて、全て平坦になってしまう気がするし、自分語りになってしまう気がします。それだけ、私の精神性に訴えてくる作品でした。こういう映画体験って、素晴らしいです。この映画には言葉で表し切れない音が溢れていて、きっと原作の小説には映像では映し切れないものがそこにはあるんだろうな。改めて原作を読むのが楽しみになりました。
私はピアノではないけど、バレエを踊る人間で、言葉ではない何かで語り合う瞬間というのを味わったことがあります。そして、舞台に立って、表現して、何かの瞬間にその場の空気が微笑みかけてくる瞬間も。それがこの作品では映し出されていて、鳥肌が立ちました。その瞬間って何にも変えられない幸せなひとときなんですよね。
あと、私はスポーツや他のことはよくわからないので芸術に限定してしまうけど、芸術をする人って、この作品の登場人物がそうだったように、心の奥にあたたかい灯火のようなものがあって、それが芸術をする原動力になっている気がします。例えば、亜夜ならお母さんとの思い出で、塵ならホフマン先生に教えてもらったピアノの楽しさだったように。私にとって、それはバレエを教えてくれた先生のあたたかい記憶であったように。でも、例えばそれを仕事にするとか、コンクールに出るとか、武器にして何かに立ち向かおうとすると、時としてとても苦しい気持ちになります。その残酷さも鮮明に描かれていて、胸が締め付けられました。
何度も泣いちゃったな。良い映画体験でした。
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