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蜜蜂と遠雷の109maniaのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.5
自分自身、来週合唱コンクールを控えていることもあり、映画のシチュエーションとしてはとてもそそられる。様々なバックグランドを持つ若き天才ピアニスト達が、コンクールのわずかな期間に、交わり互いに触発され、より高みへと向かっていく映画。
主人公亜夜の苦悩が、表現力へと昇華するまでの葛藤が、十分に描き切れていない消化不良感はあったが、何度か登場する連弾あるいは二台のピアノで心をかよわせながら演奏するシーンはどれも心あたたまる。好きなクラシック音楽がたくさん聞けたし、爽やかでとても好感が持てる。
エンドロールに食い込む感じの審査結果発表(映像なし、文字のみ)でこの映画は終わるのだが、それが答え合わせ的な感じで、ストンと入ってくるのもまた良かった。

キャスティングもよかった。特に脇役陣。
最終審査はコンチェルトということで、気難しい感じの指揮者とピアニストとのやりとりが、ドラマとして盛り上がりを作る。時々差し込まれる、コンサートホールのクローク係役、片桐はいりとともに、指揮者演じる鹿賀丈史が、ほんの少しのB級感を出しているのがなかなかいい演出だと思った。気難しい雰囲気を出しておいて、最後はちゃんと若手を思う先輩音楽家。プロっぽくてベタカッコいい。
さて、タイトルにある蜜蜂。原作も読んだが、忘れてしまった。でもうっすら蜜蜂を感じた記憶はある。映画では雨に置き換えているのか。「春と修羅」の音楽の中に登場させていたのか。残念ながらこの映画で蜜蜂を感じることができなかった。タイトルに使うぐらい原作者は大切にしていたはず。こちらの音楽性の問題かもしれないが、残念だ。
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