No.1640 2017年ドイツ映画
ナチ物。
第二次世界大戦末期、ナチスドイツ🇩🇪の最前線は、敗戦の色が濃くなり、秩序は乱れ、至る所で脱走兵が出てきていた。
主人公ヘロルト(マックス・フーバッヒャー)もその脱走兵の一人だ。その彼が大尉の軍服を盗んだことから、次第に部下が出来、脱走兵の収容者で独裁者のごとく祭り上げられていく。彼の任務は後方の実態調査。彼はそう主張し、それが罷り通っていく。
実話だ。
敗戦が続くと、組織そのものが崩れ、強固な命令系統も機能しなくなる。
彼が脱走兵から小さいながらも独裁者になるこの話の盲点はそこにある。彼が「総統の命令による任務」と言えば、それを確かめるのに数日を要し、その結果、途中で命令の問い合わせそのものが歪められ、検証もできなくなることは当然あり得る話だ。巨大な会社組織も、いざ屋台骨が崩れ始めると同じようなことが起こるのだから、国家ともなれば当然のことだろう。
彼は嘘をつくだけの知恵と巧みな話術を持っていたに違いない。彼に機会さえ与えられていれば、それなりの上層部になれたと思う。捕まった時20歳代の前半のようなことをと言っていた。恐るべき人物だったのではないか。崩壊間近のナチスと言えども、20歳前半の若者にだまされるほど簡単な組織ではないだろうから。
彼の行動がこの映画の主張だろう。彼は脱走兵でありながら、脱走兵に対して容赦ない処罰を行う。それは正に総統の下、ナチスドイツがやってきたことだ。その縮図のような収容所の振る舞い。人はこんな状況になれば、こんなふうになってしまう。例外ではない。そう言っているようだ。