ボンドとキャプテンが出てるなんてずいぶん豪華だなぁと思い手に取った作品。
一度見てみたいと思ってたアナ・デ・アルマスも出てることだし、見てみました。
おもしろかったです。
ミステリーっぽいミステリー映画でした。
まず上手いなと思ったのは、映画の始まりからすぐ物語に没入できるというところ。
作品冒頭で遺体が発見され、すぐさま警察の捜査が開始されます。
死亡したミステリー作家の遺族たちへの事情聴取のシーンでは、事件当日の状況説明と、被疑者でもある遺族たちのキャラクター説明、さらには探偵ブノワ・ブランの紹介まで一気に終わらせてしまいます。
多数の証言者にフラッシュバックを用いる演出によって、臨場感をもたらすことに加え、事件の骨格を多角的に提示することにも成功していて、この序盤の構成は実に巧みでした。
中盤以降も怒涛の展開。
「事情聴取における最後の証言者の回想によって、作品が倒叙ミステリー風にガラリと趣を変える」というのが最大のポイントですが、その後も、遺言状開示の場面での華麗なる一族の大騒動、アクション映画ばりのカーチェイス、事件とはまた別の脅迫犯の登場など、次から次へと見どころが投入されて息つく暇もありません。
しかも、最後の場面では、倒叙(すなわち犯人の側から描かれる)ミステリーだったはずの話のさらに奥に隠れていた真相を、探偵が明らかにしていく…という王道の謎解きシークエンスの愉しさまで味わえます。
頭からシッポまであんこのつまったストーリーには、満足させてもらいました。
率直に言うと本作は、鮮烈に驚かされるミステリーってわけじゃないと思います。
それこそ、世の中には、びっくりさせることに特化したような作品もありますが、そういう作品とは目的が違う感じ。
本作の魅力は、さまざまな装飾によって醸成された古き良き時代のミステリーを思わせる空気感であり、作品全編にちりばめられた心地よいユーモアです。
加えて、上述したような巧緻な作品設計がもたらす、知的な愉しさも良かった。
こうした魅力が一体となることで、本作はゴージャスなエンタテインメント・ミステリーになったんだと思います。
ライアン・ジョンソン監督は、「アガサ・クリスティを思わせるような映画を」と、本作を撮ったそうなのですが、まさに。
楽しいミステリー映画だったし、おもしろいミステリー映画でした。
追記。
レビューを拝見してて初めて知ったのですが、クリストファー・プラマーさんは亡くなってたんですね…。
ゲティ家の身代金や人生はビギナーズでの氏の演技に感銘を受けた記憶があります。
素敵な俳優さんでした。
ありがとう。