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ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のbeachboss114のレビュー・感想・評価

5.0
伝統的なフーダニットと見せかけて、倒叙形式に転調させる辺りが鮮やか。その後も一筋縄ではいかない展開で最後まで目が離せない。

役者陣も豪華。それも一般ウケではなく、ツウ好み揃いなのが心憎い。社会風刺や人間ドラマとしての厚みで、単なる謎解きものとは一線を画している。

小道具の使い方も、ミステリーとしてではなく、ドラマとして巧かった。特にマグカップが秀逸。

乱暴な喩えをすれば、刑事コロンボをアガサ・クリスティと松本清張でサンドイッチにしたようなテイストかな。

全体として格調高いしつらえ中、核の部分に「ウソをつくとゲロを吐く」なんてバカバカしくて品のない設定を据えるあたりも、人を食っていて楽しめる。

ただ、肝心の探偵さん自身にさほど魅力がないのが残念。この手の主人公に求められる「際立った個性」や「変人性」が感じられなかったのが物足りない。台本の時点でキャラの作り込みが甘かったのか、演者の役作りがイマイチなのか、わざと無味乾燥な設定にしてあったのか、いずれにしても有名スターを起用する必然性は全く感じられなかった。むしろ、警部の部下の空気を読まないキャラが随所でいい味を出してて笑わせてもらった。

それにしてもサブタイトル、ダッせ。そもそも必要? 自販機の前でコーヒー無糖か微糖か迷って両方のボタン同時に押すような踏ん切りの悪さが情けないわ。

あと、そもそも、何で「ナイフ」なん? 誰か分かった人がいたら、教えて。
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