千年女優

僕たちは希望という名の列車に乗ったの千年女優のレビュー・感想・評価

3.5
大戦後に分割占領され、冷戦によって英米仏管理の西とソ連管理の東の対立が深まる50年代後半のドイツ。東の街スターリンシュタットの名門校に通う高校生で西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を知ったテオとクルトが、授業中に抗議の黙祷を行ったことで当局に睨まれて級友を巻き込んだ騒動に発展する様を描いたドラマ映画です。

東西陣営の間で緊張が高まってついにベルリンの壁が建設される1961年の前に実際にあった実話を当事者の一人であるディートリッヒ・ガルスカが発表したノンフィクションを原作に描いた2018年公開のドイツ映画で、若い時分から映画の世界に足を踏み入れたラース・クラウメが演出する物語が評価されてドイツ外の各国でも上映されました。

歴史的背景のある物語とあって道徳の教材にも取り上げられそうな普遍的な物語である一方、その裏腹で特に前半は「善悪」があからさまで多数決の暴力で個性を押し殺しているような危うさを感じさせる部分はあります。それでも当局からの強要を前に各々の事情や感情が露わになる後半で懸念を払拭して老若男女の心に訴えかける一作です。
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